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2008.05.01

財政再建派vs経済成長重視派-山口補選後、くすぶる政界動乱の火種

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4月27日に行われた山口補選は、自民党の惨敗に終わりました。

保守王国山口での大敗は、今後の政治状況に大きな影響を与えることは避けられないでしょう。

当選の民主・平岡氏、2万票差の圧勝 山口2区補選、投票率は69%
 27日投開票された衆院山口2区補選は、民主前職の平岡秀夫氏(54)=社民推薦=が、自民新人の山本繁太郎氏(59)=公明推薦=を破り、4回目の当選を果たした。投票率は69.0%で、平成17年9月の前回衆院選を3.45ポイント下回った。民主党との一騎打ちに敗れた福田康夫首相の求心力低下は避けられないだけに、首相は平成21年度から道路特定財源を一般財源化する方針を閣議決定する意向を固めた。一方、民主党など野党はますます攻勢を強めることは確実だ。
 ▽衆院山口2区補選(開票終了)
当116348 平岡秀夫  民 前
  94404 山本繁太郎 自 新
(産経新聞02/28)

 山本氏は「地域再生」、平岡氏は「暫定税率、年金、後期高齢者医療制度の3点セット」を訴え、平岡氏に軍配が上がりました。

選挙戦の争点の行方

争点の一つ、道路特定財源のガソリン暫定税率は復活となりました。

租税特別措置法改正案を再可決、ガソリン暫定税率復活へ=衆院本会議
 衆院は30日午後の本会議で、ガソリン税の暫定税率維持を盛り込んだ租税特別措置法改正案を与党の3分の2以上の多数で再可決した。政府はこの後、臨時閣議を開き同法案の施行日を定める政令を決定する見通し。
 その後、福田康夫首相が記者会見し暫定税率復活の必要性を説明する。同改正案は2月29日に衆院で可決、参院へ送付された。参院送付後60日が経過したが、参院での可否が示されなかったことで「みなし否決」とされ、憲法の規定により衆院で再議決の手続きが取られた。野党は、衆院山口2区補欠選挙での勝利を追い風に暫定税率復活は民意に反すると反発を強めているが、福田首相の問責決議案提出は、5月12日以降に可能となる道路整備費財源特例法改正案の衆院再議決の動きを踏まえて最終判断する見通し。(ロイター04/30)

みなし否決による衆院再可決は、56年振り2度目です。

 もう一つの争点の後期高齢者医療制度は、見直しを行うのか現状のままとするのか未だ方針が定まらないようです。
 結局、6月まで調査ということで判断の先送りしています。

負担の増減、6月までに実態調査=後期高齢者医療の保険料-舛添厚労相
 舛添要一厚生労働相は30日の閣議後記者会見で、今月スタートした後期高齢者医療制度(長寿医療制度)で75歳以上が負担する保険料と、それまで加入していた国民健康保険(国保)などの保険料とを比較した負担の増減について、「各自治体でどうなっているか、全体像をできるだけつかみたい」と述べ、年金天引きが次回行われる6月中旬までに実態を調査する意向を示した。(時事通信04/30)

 自らが運営する制度を自らが変更し、自ら徴収しているにも関わらず、「どうなっているか実態調査」するというのは、矛盾でしょう。本当に「わからない」のなら、年金問題と同レベルの杜撰さです。

 既に、後期高齢者医療制度の構築にあたり、政府は膨大な経費を費やしています。これだけ莫大な経費をかけて準備しておきながら、国民への周知は殆ど行わなかったのですから、「悪意」を疑うのは当然と言えます。

開発費、想定の2倍近く 高齢者医療制度のシステム
 後期高齢者医療制度(長寿医療制度)をめぐり、新たな保険料徴収などに伴う市町村のシステム開発の一部で、当初の想定を2倍近く上回る366億円もの費用がかかっていたことが28日、分かった。
 市町村から「国の補助金では足りない」との訴えが相次いだため、厚生労働省は昨年9月、開発費の状況を調査。今年4月に事実上の財源補てんとして80億円を追加交付したが、調査結果を含め一連の経緯は公表していない。多額の開発費をかけたにもかかわらず、保険料の徴収ミスも続出しており、批判が上がりそうだ。厚労省は「調査結果は最終的な確認が済んでいない。財源措置については市町村には説明しており、隠す意図はない」としている。(共同・東京新聞04/29)

 「後期高齢者医療広域連合」という新組織の設立・維持費用、広報・説明に費やされる経費等も含めれば、さらに増加します。
 これだけの巨大システムになると「緊急対策」は現実的には困難で、相応の時間が必要です。制度を修正すればさらに費用は増加し、システムトラブルのリスクも高まります。廃止すれば、費用は全て無駄金となります。

 「医療財政が厳しい」と説く一方で、高額な費用をかけて新制度をつくり、あまつさえ国民に混乱を与えているのですから、愚かとしか言いようがありません。

政界再編への揺らぎ

 自民党にとっては、参院選での過半数割れが痛撃となっています。参院を失った事により、次期衆院選での勝利ラインは3分の2になってしまいました。過半数では、再議決が使えませんので、政権運営がレイムダック化するのは必定となります。
 自民党が鉄の結束を維持しているのは、「政権与党」であることへの求心力です。来年9月における次期衆議院議員選挙で自民党の「勝利」に揺らぎが生じれば、「政界再編」も現実味を帯びるでしょう。
 民主党は、自民党より結束力は著しく弱いのですが、参院過半数は5年間維持できるうえ、衆院選での勝利ライン(与党3分の2割れ)が低いため、党勢維持へのイニシアティブが働きます。
 今後、世界経済が不況に陥ることも、現政権にはネガティブに作用します。

 現政権は「財政再建派」がイニシアチブを握っていますが、今後、自民党内で路線対決が深刻化するのは避けられないでしょう。

谷垣自民政調会長 講演で「消費税増税がどこかで必要」
 自民党の谷垣禎一政調会長は16日、名古屋市で開かれた「ミッドランド毎日フォーラム」(毎日新聞社主催)で講演し、道路特定財源の一般財源化も含めた今秋の税制抜本改革について「私は消費税増税がどこかで必要だと強く思っている」と述べ、消費税率の引き上げが避けられないとの認識を示した。また、民主党の反対で迷走した日銀の正副総裁人事について「どうしても決まらない場合にどうするかを考えていなかったことは立法府の怠慢で、日銀法の欠陥だ」と述べ、法改正の必要性を示唆した。(毎日新聞04/17)

与謝野氏はさらに辛辣です。

ねじれ解消で政界再編にも現実味=与謝野前官房長官
 与謝野馨前官房長官は28日、ロイターのインタビューに応じ、衆院山口2区補欠選挙での敗北を深刻に受け止め、「ねじれ国会」解消の打開策として「政界再編が現実的になっていく」と見通した。
 ただ、こうした動きが表面化するとしても「9月の民主党代表選前はない」と述べ、秋以降の政局の流動化の可能性をにじませた。
 今後の政局で与謝野氏は、現在のような低い内閣支持率・自民党に対する低い評価の下で「選挙があれば、自民党は自ら死を招くことになる」との危機感を示し、「来年9月の任期近くまで政権を継続し支持率の回復を待つべきだ」とした。ただ、党内には、福田康夫政権の支持率回復はもはや不可能で「選挙をやるのであれば、新しい政権でやるべきだとの意見が出始めたことは事実」とも語り、自民党総裁選前倒しの声が出始めたことを明らかにした。
 永田町周辺では、7月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)後の衆院解散・総選挙観測が根強いが、自民・公明が現状より躍進することは考えられず、与党にとっては一段と厳しい国会運営が待ち受けている。与謝野氏は事態打開策として「連立か、部分連合か、その他のアグリーメント(政策協定)か、政界再編か。そういう話にだんだん近づいていくと思う」と述べた。与謝野氏自身も総理・総裁候補に名前が挙がるが、自民党総裁に出馬する考えがないことも繰り返した。(ロイター抜粋04/28)

与謝野馨氏 与謝野氏は「財政再建派」のキーマンの一人です。先月出版された著書「堂々たる政治」でも、持論の「消費税増税」の必要性を説き、経済成長を重視する『上げ潮』路線を「だまし討ちであり『逃げの政治』の最たるもの」と批判しています。

 一方、「経済成長重視派」の中川氏も党内抗争を予感させる発言を行っています。

「成長Vs増税」で政界再編も=秋以降の対立激化-中川自民元幹事長
 自民党の中川秀直元幹事長は29日午後、都内で街頭演説し、経済・財政政策をめぐる自民党内の「経済成長重視派」と「財政再建派」の対立に触れ、「この秋以降、(両派の戦いが)大きく始まる予感がする。この戦いの結果、場合によっては政界再編が起きるかもしれない」との見方を示した。中川氏は「現在の日本経済や国民生活は増税できる状況になく、行政の無駄を省くべきだ」と述べ、消費税増税による財政再建よりも経済成長を重視すべきだとの考えを強調。「もう1度日本を日の昇る国にするため、わが身を捨ててその先頭に立つ」と語った。(時事通信04/29)

中川秀直氏 「経済成長派」の主張は、名目成長率(実質成長率+物価上昇率)を伸ばすことで、税収が自然増となり、消費税増税をできるだけ忌避するというものです。日銀との協定による「金利上昇の抑制」も唱えています。なお中川氏は、特別会計の運用利益約40~50兆円、いわゆる「霞ヶ関埋蔵金」を暴露した張本人です。



「財政再建派」vs「経済成長重視派」


 「財政再建派」と「経済成長重視派」の大きな違いはインフレに対する考え方なのでしょう。

 極端に言えば、「財政再建派」はインフレを「悪」と規定して、長期的にデフレバイアスのかかった経済下での財政均衡(プライマリーバランスの均衡)を志向します。
 「経済成長派」は適度なインフレ期待を「善」として、名目成長率の拡大により、GDPに対する政府債務の比率の引き下げを行うものです。実質はインフレを通じて政府が国民に債務の肩代わりをさせることになります。
 与謝野氏が、「経済成長派」を「悪魔的」とか「だまし討ちであり『逃げの政治』」と強く批判するのは、税金という明示した形でなく、インフレという一種の「ダマシ」で国民に負担させようとしているためなのでしょう。

 「財政再建派」の主張は、国民的合意を得るのは不可能でしょう。
 「損切りは早く、利食いは伸ばせ」という相場格言がありますが、これは実行するのが至難の業です。人間の心理には、プラスになる領域では、その利益を確定したがる傾向があり、マイナスの領域では、不確定なものを好む傾向があるためです。
 国民負担増というマイナスの領域では、消費税増税という「確定した負担」より、インフレという「不確定の負担」を好むことになるでしょう。

関連書籍

  • 与謝野 馨
  • 定価 : ¥ 714
  • 発売日 : 2008/04
  • 出版社/メーカー : 新潮社
  • おすすめ度 : (1 review)

  • 中川 秀直
  • 定価 : ¥ 1,680
  • 発売日 : 2006/10
  • 出版社/メーカー : 講談社
  • おすすめ度 : (3 reviews)

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