2008.05.16
過去最高益・売上でも喜ばないトヨタ-米国の不況、日本の自動車数減少
先週、トヨタが決算を発表しました。
前年度は、販売額・台数ともに過去最高、利益も過去最高を達成しています。
自動車産業においてトヨタは「最強」の企業ですが、今期は減収減益の予想です。09年3月期連結営業利益見通しは、1兆6000億円で前年比29.5%減、9年ぶりの営業減益です。
トヨタ、08年3月期-当期益最高
税制等の販売 トヨタ自動車が8日発表した08年3月期連結決算は売上高、営業利益、当期純利益のいずれも過去最高を記録した。北米は微増にとどまったが、アジアや中近東で販売台数を伸ばした。09年3月期は北米販売の減速や円高、原材料高騰で9期ぶりに減収、当期純利益は7期ぶりの減益となる見通し。順調に業績を伸ばしてきたトヨタだが、成長に一服感が見えてきた。
08年3月期の営業利益は、販売増や原価改善効果の4100億円の増益要因が、研究開発費や労務費といった諸経費の増加など減益要因をカバーした。国内の販売台数は前年度より減少、北米は横ばいだった。09年3月期は、為替差損(6900億円)と原材料の高騰が営業利益を圧迫する。さらに原価改善の効果は、原材料高騰と相殺される見通し。(日刊工業新聞05/09)
減益予想の根拠は、円高・材料高・販売不振です。
為替は、08年3月期の想定レート1ドル114円に対し、今期1ドル100円の想定です。
原材料価格の高騰によるコスト増は3000億円。
販売不振は最大市場の米国経済の悪化の影響が多大です。北米市場の販売予測は、▲188,000台減の277万台とし販売台数が7%近い落ち込みと予想しています。
アメリカの自動車保有台数は、2億4120万台(2005年現在)で、世界の自動車総保有台数の3割を占めます。BRICs4国の合計台数は約100万台(2005年現在)で、年平均約15%の増加率となっています。BRICsの販売台数が急増していますが、最大マーケットの米国の不振を埋めきれるかは微妙です。
景気悪化による販売減少に、資材高による車体価格の値上がりが加わると、さらに需要を押し下げます。
株価
株価は今ひとつ冴えません。

日本を代表する企業ですので、業績はもとより、日本株式市場の低迷を受ける形となっています。
なお、時価総額18兆円は現時点で日本最大です。
値上げへの苦しい決断
鋼材価格の値上がり幅も確定しました。過去最高額となります。鋼材価格、10万円突破へ 26年ぶり過去最高
新日本製鉄とトヨタ自動車は15日、平成20年度の鋼材価格について、1トン当たり2万円台の引き上げをする方向で最終調整に入った。合意すれば、値上げは2年連続。鋼材平均価格は26年ぶりに過去最高を更新し、初めて10万円を超える。他の鉄鋼大手も追随する見通し。大口契約を結ぶ家電メーカーなどの負担コスト高騰は避けられない情勢だ。
新日鉄は原材料価格上昇に伴うコスト増を総額1兆円超と試算し、3万円の値上げを要請。トヨタは満額受け入れは拒否したものの、過去最高規模の負担受け入れを認める方針だ。新日鉄の鋼材平均価格は現在、1トン当たり約8万円だが、今回の値上げでこれまでの最高だった9万9000円(昭和57年度)を上回ることになる。中国など新興国の需要拡大を受け、今年度のブラジル産鉄鉱石価格は2月に65%増で妥結。新日鉄の宗岡正二社長が「供給責任を果たすため、不本意だが飲んだ」という石炭価格も4月に3倍で決着した。
新日鉄は15日までに、流通向け鋼板の7月分出荷価格について、4月からの2万円に続き、1万円追加値上げすると通知。すべての顧客に原料高の価格転嫁を求める姿勢を強めている。(産経新聞05/15)
トヨタは、モデルチェンジ時に価格転嫁する計画です。景気低迷で低価格車へのニーズが強まるなかでの「値上げ」は苦しい決断でしょう。
車値上げは不可避=年5%の販売台数増に意欲―ゴーン日産社長
日産自動車のカルロス・ゴーン社長は14日、インタビューに応じ、鋼板などの原材料価格の高騰が続いていることから、車両価格の値上げは避けられないとの考えを示した。また、内部的な目標として、毎年5%程度の世界販売台数の拡大に向けて努力する姿勢を強調した。(時事通信05/14)
日産のゴーン社長も値上げを表明しています。もっとも「トヨタより先に値上げはしない」とあくまで追従型です。
低燃費車へのシフト
ガソリン価格高騰によるランニングコストの上昇は、低燃費車に対する需要は喚起します。この分野で一日の長があるトヨタ・ホンダは有利でしょう。しかし自動車産業全体では、マイナスに作用します。トヨタ「プリウス」 世界販売100万台突破
トヨタ自動車は15日、ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせて走るハイブリッド車「プリウス」の全世界での販売台数が4月末までに累計100万台を突破したと発表した。トヨタは2010年代初頭にハイブリッド車を年間100万台販売する目標を掲げており、「プリウス」を中心にしたエコ戦略を加速させる考えだ。
プリウスは1997年12月に世界初の量産ハイブリッド車として国内で発売。発売当初から「21世紀のエコカー」として注目を集め、2000年からは北米や欧州などでも販売を始めた。03年には同クラスのガソリン車に匹敵するパワーをもつ2代目が投入され、海外販売が急増した。04年には世界全体の年間販売台数は10万台を突破。その後もガソリン価格の高騰などが追い風となって順調に販売を伸ばし、今年4月末までに累計販売台数が102万7700台に達した。
特に北米では「エコカーのシンボル」として人気が高く、年間販売台数は05年に10万台を突破し、昨年は18万3800台と好調に推移。米消費者団体専門誌「コンシューマー・リポート」の満足度調査で4年連続でトップになるなど多くの支持を集めている。(フジサンケイビジネスアイ05/15)
プリウスは約40カ国で販売されています。販売内訳は日本315,000台、北米592,000台、その他121,000台と、米国が圧倒的です。
究極のエコカー「電気自動車」の開発競争も加速しています。日産も中期計画で、「電気自動車」に言及し、2010年に販売を開始し、2012年にグローバル展開の構えです。
『日産GT2012』…2010年に日米で電気自動車を市販
日産自動車は、新たに策定した5か年計画「日産GT2012」の2つ目のコミットメントとして、ルノーとともに「ゼロ・エミッションの領域で世界のトップに立つ」ことを掲げた。
この実現のため、2010年に米国と日本に電気自動車を投入し、2012年にはグローバルに量販する計画を明らかにした。ゼロエミッション領域で世界トップに立つのは、世界の環境変化に寄与するのが目的だ。現在、世界では二つの潮流が目を引く。ひとつめが急速に台頭しつつある発展途上国で、もう一つが環境対応だ。これらに対応するため、電気自動車を投入する。(レスポンス05/13)
日本の総保有台数の減少
日本においては、世界の動向に反して、自動車離れが深刻です。いよいよ、日本の総保有台数の減少が顕在化してきました。
この件は、以前当サイトでも指摘しましたが、本日の日本経済新聞1面でも大きく取り上げられています。
自動車保有、初の減少・3カ月連続前年割れに
日本を走る自動車の数が減少に転じ始めた。全国の自動車保有台数は最新統計の2月末まで3カ月連続で前年同月末比マイナスとなった。3カ月連続の前年割れは自動車普及が加速し始めた1960年代前半以降初めて。人口減や消費者のクルマ離れが背景とみられる。自動車保有の縮小が本格化すれば、保険、整備、燃料など25兆円を超す関連市場の頭打ちが避けられないほか、交通量の増加を前提にする道路整備政策の見直しなど広範な影響を及ぼす。
国土交通省や自動車検査登録情報協会によると登録車、排気量660cc以下の軽自動車、二輪車を合わせた全国の自動車保有台数は2月末で7943万台と前年同月末に比べ0.2%減った。昨年12月末と今年1月末も各0.1%減少。3カ月連続の減少は現行統計で比較可能な63年以降前例がなく、戦後でも初とみられる。(NikkeiNet05/16)
統計上からは、遠からずこのような事態になるのは自明でした。
米国の場合、販売台数の落ち込みは「不況」が原因ですので、景気回復により販売台数の回復が見込めます。
日本のケースは、より深刻です。景気だけでなく構造問題も加わります。
①人口減少、特に若年人口減少
今後、運転する人が減少していきます。
普通車免許の取得者数は、年3~6%のペースで長期減少中です。
②地域格差の拡大(労働人口移動・収入格差)
保有率が高い「地方」から、「都市」への人口移転が増加。
県別の収入格差が広がっているので、さらに拡大の方向です。
日本の自動車にかかる税制・諸制度は全て経済成長期に設定したものです。自動車が増えることが前提でしたので、税制等の需要抑止策を講じても問題ありませんでした。
高度経済成長期には、暫定税率等さらに課税強化を行いました。現在でも、そのままです。
自動車の保有台数が減少したのは、日本が衰退へ向かいつつある「危険なサイン」です。
20万円台の車の開発競争が行われている時代に、未だに新車購入に20万円以上の諸経費(税金等)を課するようでは、グローバル化した自動車産業が、日本市場を軽視するのもやむを得ないでしょう。
関連書籍
最新の自動車産業の状況が俯瞰できます。![]() |
「トヨタ生産方式」の原典です。創始者大野耐一氏の著書です。
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更新: 2008.06.12 9:25:33 by 専門家や海外ジャーナリストのブログネットワーク【MediaSabor メディアサボール 】