2008.05.30
アデランス、現経営陣全員不信任-投資ファンド、スティールの勝利
アデランスの株主総会で大きな波乱が生じました。
現在の社長を含めた社内取締役全員が株主総会で不信任を受けました。
日本においては、初めてのケースとなります。
<アデランス>取締役7人再任案を否決 スティール側に賛同
かつら大手のアデランスホールディングスは29日、定時株主総会を都内で開いた。会社側が提案した取締役9人の選任案のうち、岡本孝善社長ら総会以前からの取締役7人の再任案がすべて否決された。筆頭株主で米系投資ファンドのスティール・パートナーズが反対し、他の株主も賛同したためだ。
野村証券金融経済研究所によると「過半の株をもつ創業家など大株主ではなく、多数の株主の反対で経営陣の選任が否定されたのは上場企業で事実上初めてのケース」という。
総会では、新任の社外取締役2人の選任だけが可決された。この結果、経営陣は2人だけとなるが、会社法では取締役が2人以下になった場合、これまでの取締役が引き続き経営を担うこととしており、当面は、岡本社長ら計11人が取締役会に残って経営に当たる。ただ、アデランスは早急に株主総会を開いて、新取締役を選ばねばならず、混乱も予想される。スティールは、アデランス株の26.7%を保有。2月には、業績悪化を理由にアデランス経営陣の交代を求めた。スティールのウォレン・リヒテンシュタイン代表は29日、「株主は経営に対する信任を完全に失った。我々はアデランスの企業価値を拡大するためのあらゆる戦略的選択肢を検討したい」とのコメントを発表し、アデランスに積極的に攻勢をかける意向を示した。(ロイター05/29)
これまでも、創業家と現行経営陣との間の確執により、取締役人事が否決されたことはありますが、投資ファンド等一般株主から不信任を受けたのは、日本で初めてのケースとなります。
スティールの2月末の実質保有比率は29%と言われており、株主総会への出席率を85%とすると、過半数までに必要な株数保有率は13.5%となります。今回、株主総会で現経営陣が不信任されたということは、スティールの主張に多くの株主が賛同したということです。
スティールの戦術転換
アデランスの外国人保有割合は、昨年も今年もほぼ50%前後でさほど変化していません。それにも関わらず、今年スティール側が勝利した背景には戦術の転換があります。スティールは、昨年の株主総会では、現経営陣との対決姿勢を鮮明にし、積極的に委任状勧誘闘争(プロキシーファイト)を仕掛けていました。今年のTCIの姿勢と似ています。
アデランスの新買収防衛策 スティール、反対呼びかけ 米系投資ファンド、スティール・パートナーズ・ジャパンは7日、かつら最大手のアデランスが今月24日の株主総会に提案する新しい買収防衛策に反対し、ほかの株主から否決委任状を集めると発表した。アデランスの議決権を持つ約6200の全株主に書面を送るなどして呼びかける。
スティールは、今年2月末時点でアデランスの発行済み株式の26.67%(議決権ベース)を保有する筆頭株主だ。スティールは、アデランスの防衛策は「取締役会が買い付け者(買収者)に対して対抗措置を発動することなどにより、株主が買い付けに応じるかどうかを判断する機会を奪うことを認めている」と指摘し、「より有利な条件で株式を売却する機会が奪われる」などと批判している。
アデランスは昨年12月、30%以上の株式を保有しようとする買収者が現れた場合、対抗措置として全株主に新株予約権を発行し、買収者の予約権行使は認めない防衛策を導入した。5月の総会では、対抗措置発動の是非を検討する独立委員会を3人から4人に増やすなど一部見直しを行った新防衛策を議案とする。(読売新聞07/05/08)
これにより、スティールは「乗っ取り屋」「ハゲタカファンド」としのレッテルを貼られ、報道もどちらかと言えばネガティブなスタンスでした。スティール代表リヒテンシュタイン氏の「日本人に資本主義を教えてやる」的言動も反感を買いました。
結局、現経営陣側の勝利となり、スティールは30%以上の株式を購入する事が困難になりました。
なお、同時期に江崎グリコなど複数社に対してプロキシーファイトを仕掛けましたが、全て、スティール側の敗北に終わりました。投資に善悪論を主張しても全く意味が無く、投資戦術としては完全な失敗です。
今年は、経営陣に対して、明確に退陣を要求するなど強硬姿勢は昨年よりエスカレートしています。
ハゲタカがカツラメーカー経営陣に退陣要求 米スティールがアデンランスに企業価値向上を要求
スティール・パートナーズ・ジャパンは2月8日、カツラメーカーのアデランスの経営陣に対し、業績不振から脱却し、企業価値の向上を図るための戦略的な代替案を早急に模索するよう求めた。スティールはアデランス株を24%超を保有する筆頭株主。
スティール側は「我々はすべてのステークホルダーのための企業価値向上を目指し、アデランス経営陣となるべく努力してきたが、アデランスはこちらの提案や提言をことごとく拒否した。我々は、アデランスが危機的な状況にあると考えており、もはや貴社経営陣の皆様に効率的な経営を行う能力があると信じることができない」などして、アデランス経営陣に対する不満を報道資料でぶちまけた。さらにスティールは、「我々はアデランスが直ちに戦略的代替案を模索すべきであり、具体的には岡本社長及び現経営陣よりアデランスの主導権を譲り受けるべき経営陣を探すべきだと考えている」と述べアデランス経営陣に退陣要求も行った。(MONEYzine02/08)
現経営陣に対しては相変わらず「攻め」の姿勢ですが、他の投資家に対しては、「受け身」に徹しました。
結局、このことがスティールを利することになったようです。
スティールの騒ぎがマスコミで報道されればされるほど、他の投資家が「スティールと同じハゲタカ扱いされるリスク」を感じてしまいます。日本企業に対し長期投資を志向している機関投資家にとっては、ネガティブなレッテルを貼られてしまえば、他の投資案件のパフォーマンスにも影響します。
アデランスは、連結経常利益が中期目標の120億円を大幅に下回り44億円にとどまるなど業績不振となっており、現経営陣の経営の拙さが明確でした。
1年前には一時3000円台だった株価も、1500円スレスレにまで下落し、過去10年間での最低額となってしまいました。

今回のスティールの主張は、あまり騒ぎにならなかったこともあり、他の投資家も純粋に経営効率を求めるものとして、同調し易かったと考えられます。
今回の影響
アデランス株にとってはポジティブサプライズとなりました。株価は2日連続急騰しています。
前日1,850円前後の株価は、2,205円にまで急騰しています。約19%の上昇です。現経営陣が退くことが決まったことで、時価総額が150億円増えたことになります。
日本の株式総会は「シャンシャン総会」などと揶揄されてきましたが、これで風穴が開きました。最もグローバリズムの洗礼を受けるべきは上場企業ですが、今まで日本独自の「経営者優位」の構造がまかり通ってきました。
上場企業の経営者も、世界的競争に晒される時代がきました。
参考書籍
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