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2008.06.05

バブル期と同水準に回復した税収-それでも続く増税論議

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 日本の税収(一般会計)は平成2年の60.1兆円がピークでした。

 税収は、バブル崩壊と長期不況により減り続け、平成15年には約3割減の43.3兆円にまで落ち込みました。

 その後、景気回復と増税路線への転換により、税収は増加に転じ、昨年の税収は50兆円を超え、バブル前後と同水準にまで回復しています。

 但し、政府はより以上の税収アップを計画していたようで、税収が予想より下回ったことが報道されています。

昨年度、2年連続予算割れへ=材料高で法人税収鈍化-財務省
 財務省は2日、2007年度の税収が補正後予算の見積もりを2年連続で下回るとの見通しを明らかにした。年明け以降の円高や原材料価格急騰が企業収益を圧迫し、法人税収の伸び悩みが予想されるためだ。税収の落ち込み分は数千億円規模と見込まれるが、長期金利が想定を下回ったことによる国債利払い費抑制などで挽回(ばんかい)できるため、赤字国債の追加発行は避けられる見通し。
 財務省が2日発表した4月末の税収実績によると、昨年4月からの累計税収は前年同期比5.9%増の42兆9664億円で、補正後予算に対する進ちょく率は前年同月に比べ0.9ポイント低い81.8%。このうち法人税の累計税収は3.8%増の8兆9955億円で、進ちょく率は1.7ポイント低い56.4%にとどまった。
 法人税収の半分近くを占める3月期決算法人分は7月に判明するが、財務省は「為替・株価、原材料価格などの市場動向や決算の内容を踏まえれば、補正後予算の達成は難しい」とみている。(時事通信06/05)

 税収は見込み以下ですが、国債の利払いも見込み以下ですので、収支は予想通りのようです。あまり喜ばしい事でなく、景気悪化が国の収支の面でも顕在化したことになります。

 なお、「2年連続で下回る」のは、「政府の見込み額」です。
 税収そのものは、4年連続で増えています。4年前と比べると、約9兆円の税収増となります。

日本の税収の推移( ↓ クリックで拡大します)
税収の推移
 税収総額の水準は、バブル期と遜色ない程度に回復しています。

 各税務署から確定申告の状況が報告されていますが、申告者数過去最高を更新しています。

<確定申告>9年連続で人数最高 還付申告増え 07年分
 07年分所得税の確定申告を行った人が2361万6000人(前年比0.5%増)で、9年連続過去最高だったことが国税庁のまとめで分かった。そのうち納税額のある人は776万9000人(同5.6%減)だったが、所得税の還付申告をした人は過去最高の1269万2000人(同3.6%増)で、全体を押し上げた。
 国税庁によると、還付申告の増加要因としては、高齢化に伴って還付対象になる年金受給者や高額の医療費のかかった人が増えていることが考えられる。還付申告を行った人は00年分以降1000万人を超え、確定申告者の約半分を占めるようになり、07年分では全体の53.7%になった。
 土地など不動産の譲渡所得の申告は、50万7000人(同6.7%減)、株式など有価証券の譲渡所得の申告は91万人(同3%減)で、どちらも取引が沈静化していることがうかがえる。
 07年分の申告ではインターネットを使って申告・納税する「e-Tax」を利用した人は、前年の7.4倍の363万4000人だった。(毎日新聞05/24)

 国民の1割が確定申告を行っていますが、その半数以上は、払いすぎの税金を戻してもらう「還付申告」です。
 株式の譲渡所得が減少していることも、経済の悪化を示しています。
 株式等は、利益が出た人は▲14.2%減少し、所得金額は▲8.5%減少です。
 個人の株の譲渡益には、昨年までは10%、今年から20%(一部軽減あり)が課税されます。株に含み益があるなら、昨年中に一端「利食い」した方が有利になり、株の譲渡が促進されるはずでした。
 それが昨年より、人数も所得額減っているということは、個人投資家が相当痛んでいることになります。

たばこ税引き上げの動き

 税収をあげるため、たばこ税の大幅引き上げが検討されています。

合言葉は「たばこ1箱1000円」…超党派で議連発足
 自民、民主両党など超党派の国会議員が近く、たばこ税の引き上げを目指した議員連盟を発足させる。自民党の中川秀直・元幹事長らが呼びかけている。
 議連は「たばこ1箱1000円」をキャッチフレーズに活動を始める予定だ。
 中川氏自身はヘビースモーカーだが、たばこ税増税を消費税増税の回避策として考えている。中川氏は福田首相にもたばこ税の増税を進言し、首相も前向きな考えを示しているという。議連とは別に、今月11日には、自民党の尾辻参院議員会長らが呼び掛け人となり、たばこ税に関する勉強会も発足する予定だ。(読売新聞06/05)

たばこ税推移
 たばこ税は約年間2.2兆円で、消費税の1%分と同程度です。地方自治体の収入としても大きく、1兆円以上が地方税となっています。税収の推移も安定しております。

 日本では、1箱300円のタバコの6割が税金となっています。欧州では、タバコの税率は日本より高く、タバコ価格は1,000円程度です。
 但し、欧州の場合は、税源としてあてにしているのではなく、健康に害を与える喫煙を辞めさせるための政策です。

たばこ税の仕組み

 増税は一時的には税収を高めますが、一定限度を超えると禁煙へのインセンティブが働きますので、中長期的には需要が減少し、税収は減少します。

 国民の健康促進の観点からは、正しい政策ですが、税の増収を目論むのは甘い考えでしょう。

くすぶる消費税増税

 増税論争の中でも最も注視すべきは、消費税の動向でしょう。

<自民党>財政再建派VS上げ潮派 税制論議対立激しく
 自民党は週内にも09年度税制改正に向けた議論を本格化させる。最大の焦点は消費税をめぐる駆け引きだ。谷垣禎一政調会長や与謝野馨前官房長官ら「財政再建派」が税率引き上げに向けた論陣を張る一方、経済成長重視の「上げ潮派」の中川秀直元幹事長は強く反発。福田康夫首相が立場を明確にしない中、党内を二分しかねない路線対立は激しくなっている。
 「増税や規制強化は正しいという一大勢力が存在する。彼らは『鎖国派』だ」
 中川氏は29日の札幌市での講演で、「財政再建派」への対抗意識をあらわにした。今月に入り、中川氏は党内各派のパーティーであいさつする際も増税論者をけん制。12日の伊吹派パーティーでは、同派の前身が旧中曽根派であることに触れながら「中曽根康弘元首相が唱えた『増税なき改革』を考えるべきだ」と訴えた。
 旧宮沢派(宏池会)の流れをくむ古賀、谷垣両派の13日の合流パーティーでは、宏池会の創設者である池田勇人元首相の所得倍増論を引き合いに「宏池会は成長の旗を降ろしたのかと心配になる」と述べた。
 これに対し、党幹部からは消費税引き上げの地ならしと受け取れる発言が相次ぐ。「多くの国民は米国ほど低福祉でいいとは思っていない。その負担をどう整理するかが一番の重要課題」。谷垣氏は26日、東京都内で講演し、膨らむ一方の社会保障費の財源に消費税率の引き上げは避けられないとの認識を示した。与謝野氏も16日の講演で、「上げ潮派」を念頭に「私も選挙で『税金をまけます』と演説したいが、それでは不誠実だ」と指摘。伊吹文明幹事長らも再三、消費税率アップの必要性に言及している。
 それでも中川氏の鼻息が荒いのは、党内には次期衆院選を見据えた「有権者の反発を招く消費税問題には触れてほしくない」(中堅議員)という空気が強いためだ。谷垣氏に近い議員からは「消費税率の引き上げを置き土産にできるなら下野しても構わない」との声すら上がっており、衆院選をにらみつつ、今後、党内の摩擦に拍車がかかる可能性がある。(毎日新聞05/26)


 政府部門の役割は、「税金を集め、国民に再分配することで国家経済の成長を図る」ことですが、昨今の議論を見ると、借金返済とか年金穴埋めとか、「金策」の議論に終始しています。
 「金策」ですと、「国の財政を悪化させたのは誰か」という責任論になりますので、いくら説明しても国民の理解は得ることは不可能でしょう。
 
 消費税の税としての問題点は「逆累進制」が強い事です。単純に税率を上げると、「格差問題」や「少子化問題」がさらに悪化する危険性があります。
 「格差問題」や「少子化問題」の悪化は、国全体の経済縮小に直結しますので、看過できない問題です。

参考書籍


  • 竹森 俊平
  • 定価 : ¥ 945
  • 発売日 : 2007/02
  • 出版社/メーカー : 日本経済新聞出版社
  • おすすめ度 : (4 reviews)
    シュンペンターの口癖は「わがパパ、マルクス」だったそうだ
    不況容認論ではないが、完全回避論でもない
    ここ数年で一番面白い本(星6つあげたい)
    あの名作の感動が甦る!

前政府税調会長の石弘光氏の大著です。
  • 石 弘光
  • 定価 : ¥ 7,875
  • 発売日 : 2008/01
  • 出版社/メーカー : 東洋経済新報社
  • おすすめ度 : (1 review)
    税制改革史の集大成。税制に限らず、経済政策全般を学ぶものにとっても必読の書。


参考記事

08.05.01財政再建派vs経済成長重視派-山口補選後、くすぶる政界動乱の火種

07.11.19財政再建派の逆襲-消費税をあきらめない-

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法人税や消費税などの引き上げによる税収増の話は書かれているが、個人所得税(累進課税度の復活)、地方住民税、贈与税、相続税の引き上げによる税収増策がまったく欠落しており、これらは貧富の格差是正にも有効なものでもあるだけに残念である。

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