2008.06.16
白熱電球が消える日-省エネが後押しする次世代照明技術
ごく近い将来、白熱電球が無くなりそうです。
今年4月に政府が方針を示してから、急速に廃止の流れが加速しています。
政府の方針
政府が白熱電球の製造を中止させるという話は、昨年末にも伝えられていました。白熱電球の製造中止表明へ 温暖化対策で蛍光灯に切り替え
政府が温暖化対策の一環として、家庭やオフィスの照明で使われる白熱電球について、電力消費が大きくエネルギー利用効率が悪いことから、国内での製造・販売を数年以内に中止する方針を打ち出す見通しとなった。白熱電球に比べ消費電力が少なく、長持ちする電球形蛍光灯への切り替えを促す狙いがある。年明けにもまとめる新たな対策に盛り込む方向。メーカーに協力を要請するとともに、海外にも同様の取り組みを呼び掛ける考えだ。政府筋が19日明らかにした。切り替えの期間は今後詰めるが、「3年以内」とする案も出ている。温室効果ガスの排出削減を義務付けた京都議定書の約束期間が来年から始まるのを控え、排出量が急増する家庭・オフィス部門の対策を強化。全世帯が電球形蛍光灯に切り替えた場合のガス削減効果は、家庭からの排出量の1.3%に当たる約200万トンとみている。ただ、家庭で使う電球形蛍光灯の価格は白熱電球に比べ10倍以上と高いため、消費者の反発を招く可能性もある。(共同通信07/12/19)
政府は、今年4月に白熱灯を全廃の方針を正式に表明しました。
「白熱灯は全廃」蛍光灯へ入れ換えを 甘利経産相
甘利明経済産業相は5日、北海道洞爺湖町で開かれた「地球温暖化問題に関する懇談会」で、「平成24年までに家庭用照明の白熱灯を省エネタイプの電球型蛍光灯に総入れ替えしたい」と述べ、白熱灯を全廃する意向を表明した。産業界に比べて家庭部門は温暖化対策が遅れており、消費電力が少ない電球型蛍光灯の普及をさらに進めることで、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出を削減する。電球型蛍光灯は、価格の高さがネックになっており、今後、家電メーカーや販売店で統一組織を設け、製造コストの削減など具体的な普及策を検討していく。(産経新聞04/05)
この時期は、洞爺湖サミットに向けての「地球温暖化対策」の議論が活発だった時期で、深夜放送の自粛検討なども議論されていました。
なお、オーストラリアや米国の一部の州も白熱球全廃を表明しています。
メーカーの対応
メーカーは政府方針に即応しました。白熱電球の販売個数は年間約1億3500万個で、このうち松下が8000万個、東芝が4000万個と、2社でほぼ市場を寡占しています。
この2社が相次いで白熱電球の製造縮小・廃止を決定しました。
東芝は、2年後に全廃を表明しています。
東芝ライテック、白熱電球を2010年めどに生産中止
東芝ライテックは4月14日、2010年をめどに一般白熱電球の製造を中止する方針を発表した。二酸化炭素(CO2)排出量の削減に向け、経済産業省が12年までに白熱電球を蛍光ランプに切り替える目標を掲げたのを受けた。
白熱電球の生産は東芝の発祥事業の1つ。06年度実績で年間約4000万個の白熱電球を製造しているが、10年をめどに生産ラインを全廃する方針。調光用途など、代替が難しい一部の用途向けに少量の販売は継続する方針だが、それ以外は電球形の蛍光ランプやLED電球への置き換えを進めていく。同社による白熱電球の製造停止で、年間約50万トンのCO2削減が可能としている。東芝は、1890年に設立された白熱電球製造会社「白熱舎」が源流の1つ。白熱舎は後に「東京電気」となり、芝浦製作所と合併して東京芝浦電気になった。(ITmedia04/15)
松下も東芝ほど極端ではありませんが、段階的に縮小方針です。
<電球>松下も白熱から蛍光灯にシフト 12年には7割に
松下が発売する電球型蛍光灯の新製品。白熱電球のように瞬時に明るくなるとアピールし、白熱電球からの切り替えを進める
照明最大手の松下電器産業は9日、一般家庭で使う電球のうち、消費電力が少ない蛍光灯タイプ(電球型蛍光灯)の販売割合を07年の26%から12年には70%に引き上げると発表した。蛍光灯は白熱電球に比べて二酸化炭素排出量が少なく長寿命のため、白熱電球からの切り替えを進める。すでに東芝子会社の照明大手、東芝ライテックが白熱電球の生産中止を決めており、同様の動きが広がってきた。
経済産業省が「12年までに家庭などで使用される白熱電球を原則として蛍光ランプに切り替える」との目標を掲げたことを受けた措置。切り替えにより、12年には家庭に普及する松下の白熱電球総数は07年の6割に減少し、電球型蛍光灯は倍増する見込みで、約90万トンのCO2削減につながるという。
ただ、白熱電球は明るさを調節しやすく、装飾用を中心に広く普及している。照明器具によっては電球型蛍光灯には合わないものもあるため、すぐに白熱電球をなくすのは難しく、技術開発も進めながら段階的に切り替える方針だ。同社は同日、明るくなるまで時間がかかるという電球型蛍光灯の欠点を克服した「パルックボールプレミアQ(クイック)」を7月に発売することも発表した。市場想定価格は1500円前後と白熱電球の10倍程度だが、寿命は13倍長く、消費電力も少ないとアピールしている。(産経新聞06/09)
白熱電球は完全なコモディティですので、いくら寡占化しても商売としての旨味は殆どありません。
メーカーは、政府方針を奇貨として、より高価格な製品への代替を狙っているのでしょう。
次世代照明
国内の照明市場の規模は約1兆500億円(車両用込)で、この10年以上横ばいが続いております。世界の照明需要は、2003時点で631億ドルとなっております。その殆どが蛍光灯と白熱灯です。照明は、導入コストとデザインが優先されてきましたが、エネルギーコストの上昇に伴い、今後はランニングコストも強く意識されるようになりました。
蛍光灯は、白熱灯に比べ、省エネ効果は高くなりますが、水銀等を含有しており、廃棄物として取扱に注意する必要があります。諸手を挙げて「環境に優しい」とは断言できない面があります。
そこで、蛍光灯を超える照明器具の開発も進んでいます。
次世代照明の第一候補はLED照明です。数年前から市販されてますが、今年以降、本格的な普及期に入っていきそうです。
東芝、2020年に照明売上高1兆円・白色LED中心に世界シェア2割目指す
東芝の西田厚聡社長は5日、ロイターのインタビューに応じ、白色LED(発光ダイオード)を中心に新型の一般用照明事業で、2020年に売上高1兆円、世界シェア20%を目指す考えを明らかにした。
西田社長は「LEDを中心とした新照明の市場は2020年には5兆円市場になると見込んでいる。そこでシェア20%を取って売上高1兆円を目指したい」と述べた。東芝の照明事業は現状では国内中心に展開している。西田社長は、白色LEDや電球型蛍光灯について「当社は技術レベルで先行しておりチャンスだ」と強調。ロシアや中国向けなどに出荷するほか、「海外工場も考えないといけない」(西田社長)としている。
西田社長は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が売却方針を示している家電事業について「全く興味がない」と語った。GEから買収の打診があったかどうかについては「なかった。東芝は買わないと思ったのではないか」と述べた。(ロイター06/05)
LED照明は、この数年で急速に技術革新が進みました。元々省エネ性能及び寿命は蛍光灯以上でしたが、ネックは光量不足でした。課題の光量も克服し、最近の製品は蛍光灯と遜色ないレベルになってきました。

残る最大の課題は価格で、60W白熱電球が80円前後、60Wクラス電球型蛍光灯が800円~1000円、LED照明は7,000円~8,000円となり、電球型蛍光灯の7~10倍、白熱電球の100倍の価格です。
この辺は、量産効果に期待したいところです。せめて電球型蛍光灯並の売価になることを期待したいところです。


有機EL照明も、有力な次世代照明候補です。
有機ELといえば、次世代液晶としても技術開発競争が進んでいますが、薄くて軽い特性を活かし、次世代の照明用光源としても期待されております。
松下電工は、有機EL照明にも注力しており、2012年に商品化を計画しています。
松下電工、有機EL照明に参入
松下電工は有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)を使用した照明事業に参入する。今月中にも出光興産、液晶製造装置を手掛けるタツモとの共同開発に着手、2012年の商品化をめざす。薄くて折り曲げることも可能な有機EL照明は現在の蛍光灯などに代わる次世代照明としてコニカミノルタホールディングスや三菱重工業などが製品や部材の開発を進めている。商品化に向けた競争が激しくなりそうだ。
有機ELは材料となる有機物の樹脂が、電圧をかけると自ら明るく発光。現在の液晶などより薄いテレビとしての商品化のほか、壁紙のような新しいデザインの照明への活用が期待されている。(日経新聞07/09/07)
有機EL照明に関しては、他社も参入の意向です。
三菱重工など4社、有機EL照明の事業化会社設立
三菱重工業、ローム、凸版印刷、三井物産の4社は28日、照明用有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)の事業化に向けた合弁会社を設立したと発表した。来年春からサンプル品を販売し、事業性を見極めたうえで早ければ3年後の量産を目指す。消費電力が少ない「エコ照明」の需要が高まるなか、次世代光源と期待される有機ELの技術開発を加速する。有機ELはテレビや携帯電話の表示装置で実用化されているが、照明用の専業会社設立は世界で初めて。新会社は「ルミオテック」。資本金は14億円で、出資比率は三菱重工51%、ローム34%など。社長には三菱重工の重永久夫・機械・鉄構事業本部副事業本部長が就任。従業員約20人で、山形県米沢市に本社を置く。
同日公開した約15センチ角サイズのサンプル品は、すでに「輝度などについて実用レベルに達している」(重永副事業本部長)という。新会社でさらに寿命向上や製造コスト削減を進める。
有機ELは発光ダイオード(LED)と並び、低電力消費や有害物質を使用しない利点から次世代照明の有力候補。米ゼネラル・エレクトリックなどが事業化を目指している。(産経新聞05/28)
新会社は量産開始から3年後を目処に、20%のシェア獲得を目指しています。


有機EL照明の特徴は、「面光源」であることでしょう。従来の光源は基本的に1点が光ります。LED照明も点照明です。普及により、照明デザインや利用方法の変革も促進されるでしょう。
また、印刷技術の応用により、将来においては大幅なコストダウンも見込まれます。
販売・利用者の流れ
照明に関わる大転換は、販売分野にも波及し始めています。既に小売現場においても販売が縮小する流れです。2ヶ月後には、イオンが自社ブランド品の販売を停止します。
イオン:「トップバリュ」白熱電球の販売、8月めどに停止
スーパー最大手のイオンは16日、プライベートブランド「トップバリュ」の白熱電球の販売を8月をめどに停止することを明らかにした。経済産業省が打ち出した「12年までに白熱電球をすべて消費電力が小さい蛍光ランプに切り替える」との方針を受けたもの。今年4月には大手の東芝ライテックが、10年をめどに白熱電球の製造を全面中止すると発表しており、製造と小売りで同様の動きが広がりそうだ。
販売を打ち切るのは白熱球の「シリカ電球」。08年2月期には全国のスーパーなど約1600店で約70万個を販売した。既に昨年12月に生産を停止しており、在庫がなくなる8月ごろをめどに販売をやめる方針。ただ、一部で需要もあることから、トップバリュ以外の一部商品は販売を続ける。
イオンは「(温室効果ガス削減を進める)政府の方針に協力することにした」(広報担当)としている。(毎日新聞05/17)
ローソンは、LED照明の導入に踏み切りました。
ローソン、店内照明にLED=CO2削減へ来春以降の新店に
コンビニエンスストア大手のローソンは15日、来春以降に新たに出店する全店舗の看板や店内の照明器具に発光ダイオード(LED)を導入する方針を明らかにした。電力消費量が蛍光灯の半分で済むLEDの採用で二酸化炭素(CO2)排出量を削減し、地球温暖化対策を強化する。改装する既存店にも導入を検討する。(時事通信06/16)
この決定には、来年以降、LED照明の販売単価が大きく下落するという読みもありそうです。電力コスト削減効果、CO2排出権取引開始の時期等を考慮すれば、来春でもペイできるという判断なのでしょう。
さらに他社に先行して導入表明すれば、多くのマスコミに大きく取り上げられますので、広告にもなります。
CO2削減効果の有効性
家庭の電力使用量のうち照明の占める割合は16%程度です。政府の試算では、家庭の照明による電力使用量が1割は減る事になります。家庭用の照明器具は、リビング・ダイニング等人が長時間居住している空間の照明は大部分が蛍光灯となっており、白熱灯は廊下・トイレ等、一時的で頻繁にオンオフする箇所となっています。
これは、蛍光灯(省電力、頻繁なオンオフで寿命が縮む)と白熱灯(頻繁なオンオフに向く)の特性を活かした合理的な選択と言えます。
一般的な家庭での利用を想定した場合、白熱灯による電力消費量は微々たる水準ですので、統計で現れるほどの省エネ効果があるのかは、いささか微妙です。
政府の突然の方針発表には迷惑な面もありますが、日本が省電力効果が高い新型照明の分野でイニシアティブを取れれば、一定の効果はありそうです。
参考書籍
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壮大な視点で切り取る、読みやすいイノベーション論。
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