2008.06.19
枯渇する化学肥料・リン-日本型農業を窮地に追いやる資源争奪戦
日本の食糧自給率は39%にまで落ち込みました。
そこに、中国製ギョウザの農薬混入事件が生じて、輸入食品への安全性への疑義が強まりました。
さらに、輸入食材の急騰が重なって、「食糧は世界からいくらでも安く買える」という神話が崩壊しました。
これほど農業問題・食糧安保論がクローズアップされたことは、近年ないでしょう。
さまざまな農業対策が議論されているところですが、日本の農業は、さらに深刻な事態に直面しています。
農業に不可欠な「化学肥料」は大半が輸入ですが、肥料価格が急騰する異常事態となっております。
肥料価格、最大2倍に値上げ=リンなど原料高で来月-全農
全国農業協同組合連合会(JA全農)が都道府県の農協などに販売する化学肥料の価格が、前年比で1.5~2倍程度まで引き上げられる見込みであることが 19日、明らかになった。リンやカリウムなど肥料原料の高騰が主な理由。JA全農は毎年、7月に肥料価格を改定しており、値上げは今回で5年連続。値上げ幅は3割程度上昇した1973年の第一次石油危機時を上回り、過去最大となる。
肥料価格は農産物の生産コストの1割程度を占める。大幅な値上げにより、生産コストが大きく膨らむため、農産物の小売価格を押し上げる可能性もある。(時事通信06/19)
化学肥料の基本的な3要素は、窒素・リン・カリ(カリウム)です。
この数年来、化学肥料も、原料も急騰していますが、特にリン鉱石は暴騰状態です。加工前のリン鉱石は、今年3月には約38,000円/トンとなり、1年で5倍以上急騰しています。
「リン」について
有機リン系農薬「メタミドホス」や、リン化合物による河川・海洋の「富栄養化問題」など、とかく悪役となる「リン」ですが、化学肥料には不可欠な重要な元素です。
「リン」そのものは地球上に普遍的に存在していますが、現在の化学肥料は採掘したリン鉱石から製造されています。問題は、リン鉱石は地球上に著しく偏在していることにあります。世界のリン鉱石の産出量は2007年で1億4700万トンです。このうち中国、米国、モロッコの3カ国が3分の2を占め、上位6カ国で8割、上位10カ国で9割を占めます。
| 国名 | 産出量 |
| 中国 | 3500 |
| 米国 | 2970 |
| モロッコ | 2800 |
| ロシア | 1100 |
| チュニジア | 770 |
| ブラジル | 600 |
| ヨルダン | 570 |
| シリア | 380 |
| イスラエル | 300 |
| 南アフリカ | 270 |
| エジプト | 230 |
| 豪州 | 220 |
| トーゴ | 100 |
| その他 | 930 |
| 計 | 14700 |
USGS(米国地質調査所)資料

逼迫するリン供給
米国のリン鉱石産出量はピークアウトしつつあり、輸出に関しても既に制限しています。中国も4月以降、化学肥料とリン製品に対して、高率の関税をかけてきました。
中国がリン製品に100%の特別輸出関税を課税へ
4月にリン肥料などの化学肥料製品に100%の特別輸出関税を課したのに続き、財政部は19日、国務院の決定に基づき2008年5月20日から12月 31日まで、貿易形式、地区、企業を問わす、輸出するリン製品について、現有の輸出税率や輸出完税価格を基礎とし、100%の特別輸出税を課税すると発表した。新華社のウェブサイト「新華網」が伝えた。(人民網日本語版05/20)
中国の関税率100%という措置は、事実上の輸出制限です。この背景には、四川省大地震によってリン鉱石生産が逼迫している事情があります。
中国:リン鉱石価格が上昇
5月27日、国際的なリン鉱石価格の上昇と四川省大地震の影響により、中国国内のリン鉱石価格は高騰している。
データによると、2007年、四川省におけるリン鉱石生産量は511万トンで、中国全国の生産量のうち11.3%を占める。また、四川省におけるリン鉱資源の95%以上が、震源地であるブン川の周囲100キロメートル以内に位置しており、地震による影響でほぼ生産を停止している。
リン製品輸出の過剰増加を抑制し、中国国内の需要を満たすため、中国財政部は「2008年5月20日から12月31日までの間、全ての輸出リン製品に100%の特別輸出関税を追加する」と公表した。当該関税調整政策は、リン製品の輸出量を減少させ、国内の供給に応じ、値上げを一定の割合で抑制できるが、国際リン鉱石価格の上昇が続けば、国内のリン鉱石の価格も連動していくと見られている。(IBTimes05/27)
今回の中国によるリン鉱石100%輸出関税は、資源ナショナリズムと言うより四川大地震のためでしょう。生産力が回復し、価格上昇が抑制されれば、ある程度緩和されると思います。
但し、長期的には資源の戦略物資化が進む流れには変わりなく、日本にとっては脅威です。
日本は、このリンをほぼ100%輸入に頼っており、輸入量は年間70万トン程です。
リン資源を回収・リサイクルする方法は数多く提案されています。汚泥からの回収プラントも多くの企業が手がけていますが、課題はコストです。
農業再生には、さまざま意見が噴出していますが、最大の問題は「儲からない」ことでしょう。
コスト高は、現在の日本型農業を、一層「儲からない」状態にしています。
日本の「農家」を中心に据えた農業政策は、資源高騰により完全に行き詰まってしまいました。
参考書籍
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参考記事
08.06.13食糧高騰と政府の対応-日本の農政の混乱08.04.24世界的食糧危機-穀物高騰と広がる輸出規制








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