2008.06.24
量産準備体制に入った電気自動車-開花する日本の技術力
自動車メーカーのEVシフトが進んでいます。
原油の急騰が、自動車の脱化石燃料の技術開発に強力なインセンティブを与えている事は間違いないでしょう。
電気自動車は日本メーカーが導入に積極的でしたが、いよいよ欧州勢も本格参入の構えです。
ドイツのダイムラーが2010年から電気自動車を製造・販売します。
【ドイツ】ダイムラー、2010年に電気自動車導入へ
自動車大手ダイムラーが超小型車「スマート」と高級車「メルセデス・ベンツ」の電気自動車を2010年に市場投入する計画だ。ディーター・ツェッチェ最高経営責任者(CEO)がフランクフルター・アルゲマイネとのインタビューで明らかにした。同社が電気自動車の具体的な発売時期に言及するのは初めて。
ダイムラーは2007年から4年間の計画で、100台の試作車を用いてロンドンで電気自動車版スマートの公道試験を実施している。これらに搭載されている充電池は現在主流のニッケル水素電池だが、本格展開に当たってはタイヤ・自動車部品大手コンチネンタルと共同開発したリチウムイオン電池を採用する見通し。駆動技術研究部門トップのヘルベルト・コーラー氏は先に、現行スマートのモデルチェンジ前に量産を開始する考えを示していた。
ツェッチェCEOは今回、2010年をめどに電気自動車を導入すると明言。スマートだけでなく、メルセデスでも展開するとしている。なお販売価格がどの程度になるかはまだ決まっていない。「充電池をリースとするか、本体と一緒に販売するかによって変わってくる」(同CEO)という。(NNA抜粋06/23)
日本では、三菱自動車が商用車市場へも拡販を急ぎます。
三菱自、商用車タイプの電気自動車を開発へ
三菱自動車工業は19日、荷物の集配に適した商用車タイプの電気自動車の開発に取り組む考えを明らかにした。日本郵政グループの郵便事業会社が、約2万台の保有車を電気自動車に切り替える計画を示しており、三菱自動車は商用車を揃えて受注につなげたい考え。同日午前の定時株主総会で、相川哲郎常務が述べた。
三菱自動車が来年夏以降に国内投入する電気自動車「アイミーブ」は、軽自動車をベースにした乗用車タイプ。相川常務は「まずは(郵便事業会社に)『アイミーブ』を使ってもらい、できるだけ早く集配車用のバンを開発していきたい。ぜひ受注をしていきたい」と語った。さらに相川常務は、「アイミーブ」を2010年にも欧州で発売する計画も明らかにした。今年秋から10台ほど試験投入し、市場の反応を見極める。各国の当局と税制優遇などについても話し合っていくという。これまで三菱自動車は「アイミーブ」の海外展開について、2010年以降とだけ説明してきた。(ロイター06/19)
商用車の場合、走行距離と価格が課題でしょう。価格は税制とランニングコストで補えますが、走行距離を伸ばすには電池の技術革新が必要となります。
車載用リチウムイオン電池の生産準備体制
電気自動車の燃料は「電気」ですので、最も重要なデバイスは燃料タンクにあたる「電池」です。電池技術の急速な発展が、実用的な電気自動車を可能にしたと言っても過言ではありません。
現在の車載用電池は「ニッケル水素電池」ですが、より高性能な「リチウムイオン電池」へのシフトが始まりつつあります。
リチウムイオン電池は、ニッケル水素電池に比べ、寿命が長く(メモリー効果が少ない)、軽く大容量(蓄電量が大きい)等優れた特性を持ちます。
リチウムイオン電池は、1985年に旭化成の吉野彰氏が発明・開発した日本発の技術です。
各自動車メーカーは、プラグインハイブリッドカー・電気自動車の市場投入に先駆け、車載用リチウムイオン電池の量産準備に着手しています。
日産はNECと組んで電池生産に乗り出します。
日産、リチウムイオン電池を2011年に6万5000台分生産
日産自動車は19日、NECグループと共同出資で昨年4月に設立したリチウムイオン電池の生産・販売会社が神奈川県座間市に工場を建設、2009年度に稼動開始すると発表した。
共同出資会社は日産が51%を出資する「オートモーティブエナジーサプライ(AESC)」で、日産の旧座間工場内に工場を建設する。今後3年で120億円を投資、稼動する09年度には電気自動車やハイブリッド車向けなどに1万3000台を生産の計画。その後、11年には6万5000台相当分に増産する。
当初は日産の電動フォークリフトに採用する。その後2010年からは日産の独自開発によるハイブリッドや日米で展開する電気自動車に搭載の予定。電気自動車については、米ベンチャー企業との提携で12年までにイスラエル、デンマークでも事業を行う。
都内のホテルで会見した日産のカルロス・タバレス副社長は「新中期計画でゼロエミッションは戦略の柱に位置づけている。電気自動車のリーダーになるためにもバッテリーのリーダーを目指す」と語った。(レスポンス05/11)
なお、NECは富士重工とも提携しており、合弁企業「NECラミリオンエナジー」を設立しています。

三菱自動車は、昨年12月に大手電池メーカーのジーエス・ユアサ コーポレーションと共同で新会社「リチウムエナジー ジャパン」を設立済みです。2009年から生産に入ります。
業界トップのトヨタは松下との関係を強化します。さらに自社独自に次世代型電池の研究開発にも着手します。
トヨタ、リチウム電池の性能超える次世代電池を研究開発へ
トヨタ自動車は11日、環境問題への取り組みについて会見を開き、リチウムイオン電池の性能を超える車載用次世代電池の研究開発を進めていくと発表した。「電池研究部」を6月下旬に新設し、開発に着手する。
家庭で充電できるプラグインハイブリッド車や、電気自動車への搭載を想定している。併せてトヨタは、松下電器産業との共同出資会社「パナソニックEVエナジー」を通じ、2010年から車載用リチウムイオン電池の本格生産を開始することも発表した。09年から少量生産し、2010年に法人向けに発売するプラグインハイブリッド車へ搭載する。トヨタの渡辺捷昭社長は「地球温暖化とエネルギー問題への対応なくして、自動車産業に未来はない。持続可能な発展に貢献していく」と語った。(ロイター06/11)
トヨタの次世代電池の研究開発は、「全固体電池」や「金属空気電池」といった基礎研究段階の技術を、2030年を目処に実用化して、全車両のEV化を目指す超長期戦略です。
欧米の主要自動車メーカーもバッテリー確保に注力しています。独フォルクスワーゲンは三洋電機と組みます。
車載用リチウム電池 800億円かけ量産 三洋、欧州・国内に新工場
三洋電機は28日、2008~15年までの8年間に約800億円を投じ、ハイブリッド車(HV)用リチウムイオン電池の工場を国内と欧州に建設すると発表した。パソコンや携帯電話用電池で世界シェアトップの技術力を生かし、今後、普及が見込まれるHV用でも09年から量産に乗りだし、15年には月産1000万個体制を目指す。
リチウム電池は現在のニッケル水素電池より小型軽量化が可能で、同じ出力であれば、ほぼ半分の大きさにできる。このためHV用ニッケル電池の新規投資を打ち切る。計画ではまず徳島工場(徳島県松茂町)にあるリチウム電池の試作ラインを量産に活用。これまで10年の稼働を目指していたが、自動車、電池メーカーを巻き込んだ開発・量産競争が加速しているのを受け、09年末に量産を開始する。10年には月産100万個を生産する計画だ。
すでに試作品を国内外の主要自動車メーカーにサンプル出荷しており、独フォルクスワーゲン(VW)グループと共同開発することで合意。10年後半には傘下のアウディが、三洋製リチウム電池を積んだHVを市場投入する。
さらに、10年には徳島に続く新工場を国内に建設し、12年以降に欧州でも新工場を建設する。また、家庭用コンセントから直接充電できるプラグ・イン・ハイブリッド用電池を11年に導入する。これにより15年には世界のHV用車全体の40%にあたる170万~180万台に三洋製リチウムイオン電池の搭載を目指す。(フジサンケイ ビジネスアイ05/29)
米GMは日立製作所から電池供給を受けます。
日立がGMからハイブリッド電気自動車用リチウムイオン電池システムを受注
株式会社日立製作所は、このたび、ゼネラル・モーターズから、リチウムイオン電池システムを受注しました。日立のリチウムイオン電池システムは、GMが2010年に北米において年間10万台以上の規模で市場投入する予定となっているハイブリッド電気自動車に搭載されます。(日立ニュースリリース抜粋03/04)
ホンダは、このリチウムイオン電池の生産囲い込みの流れから距離をおいています。
ホンダ年央会見…福井社長「リチウムイオン電池の開発は数社と」
ホンダの福井威夫社長は21日、恒例の年央会見を行い、その中でリチウムイオン電池について、「いろいろな角度から開発を進めている」と述べた。電池メーカーについても、特定のメーカーに決めることなく、数社と協力しながらやっているそうだ。「いいところがあれがすぐにでも採用したい」(福井社長)が、リチウムイオン電池にはまだまだ課題が多いとのこと。
ニッケル水素電池に比べて、信頼性、重量、コスト等に課題があり、「特にコストという観点ではまだまだ壁が乗り越えられていない」と福井社長は述べた。(レスポンス05/22)
インフラの整備
EV用の充電装置も、大型スーパーのイオンが導入を決めたことで、普及に拍車がかかってきました。電気自動車充電装置 首都圏に100~200台設置 東電、三菱自など連携
走行中に二酸化炭素(CO2)を排出しない電気自動車(EV)が発売されるのに合わせ、東京電力や三菱自動車などが来年中にEV用の急速充電装置を東京都、神奈川県などの首都圏で100~200台程度設置する運びとなったことが23日、分かった。大型スーパーのほか、大手のコンビニエンスストアやホテルなどと設置に向けた協議を進めており、EV普及に弾みがつきそうだ。
EVは1回の充電での走行距離が最大160キロメートル。基本的には自宅の家庭用コンセントから充電することを想定しているが、「安心して乗ってもらうには充電インフラの整備が不可欠」(三菱自)とされる。来年からは三菱自と富士重工業が国内でEVの販売を開始するため、インフラの整備が待ったなしの状況となっていた。
東電などが開発したEV用急速充電装置は、大きな電流を一気に車内の充電池に流し込めるため、数十分程度で充電の完了が可能となる。このため、ドライバーが買い物や食事に行った合間に駐車場内で充電すれば、電気が“満タン”の状態でクルマを再発進できる仕組みだ。設置にかかるコストも1台300万円程度で済むという。
三菱自や富士重などは大手スーパーのイオンと連携し、充電装置をショッピングセンター内に設置する方向で調整中。今秋にイオンが埼玉県でオープンする店舗が第1弾となる。東電などはこうした充電装置の設置をコンビニやホテル、公共施設などにも広げる方向で協議を進めている。また、こうした店舗・施設を拠点とするEVのカーシェアリング(会員制による自動車の共同利用システム)なども検討する。
EV普及に熱心な神奈川県は、独自で急速充電装置の整備を行うことやEV購入時の補助制度などの導入を決めている。三菱自などが来年発売するEVは、都市部などでの近距離利用を想定していることから、東京都や神奈川県など首都圏を中心に拠点を整備していく方針。
さらに、日本郵政グループの郵便事業会社は郵便集配車など約2万台をEVに切り替える計画を示しており、「将来的に一つの県に50カ所程度の装置の設置を目指す」(東電)考えだ。(産経新聞06/24)
エコカー普及への課題
トヨタのハイブリッド車の販売台数は、2007年5月で累計100万台を超えました。
トヨタはハイブリッド戦略をさらに強化します。
ハイブリッド トヨタ、6車種投入へ 来年から 国内販売 テコ入れ
トヨタ自動車が2009年から4年間で、6車種のハイブリッド専用新型車を国内などに投入する計画を策定していることが13日、分かった。ガソリン価格の高騰や環境意識の高まりを受け、人気が強まるハイブリッド車のラインアップを充実させて、低迷する国内販売のてこ入れを図る。トヨタのハイブリッド専用車は現在、小型セダン「プリウス」だけ。計画では、セダンでの設定を増やすほか、新たにミニバンなどにも拡大する。
第1弾として、09年8月をめどにレクサス、トヨタの両ブランドで中型セダンを発売。エンジン排気量2400ccのハイブリッドシステムを共用する。トヨタ自動車九州(福岡県)で、年間数万台の生産を予定している。
2010年末にはプリウスのステーションワゴン版を投入する。生産台数は12年段階で年間12万台を見込んでいる。
レクサスでは2011年前半、トヨタブランドでは同年後半にそれぞれツーボックス車をラインアップに加える計画。生産台数は現時点で、レクサス車が9万台、トヨタ車が14万台(いずれも2012年)を見込む。2012年後半には3列シートのミニバンで初めて専用車の投入を想定している。
ただ、ハイブリッド車の性能を左右する蓄電池(バッテリー)の開発状況や市場動向次第では、計画の一部を見直す可能性もある。このほか、電気自動車やクリーンディーゼル、燃料電池、バイオ燃料など、多様な動力源の開発も進める計画だ。(東京新聞06/14)
ハイブリッド車普及の難点は、高額な車両価格でしょう。同じ車格の車の約2倍ですから、燃料費節約を考慮しても、元を取るのは至難の業です。
現行のエコカーの位置づけは、環境意識の高い中流上位層のための車です。
「地球環境のためなら損をしても構わない」と考える、ある程度裕福な人のための車です。
これでは、普及は限定的でしょう。ハイブリッド車にしろ電気自動車にしろ、本格的な普及のためには、トータルコスト(購入費用+維持費用)が、1~3年で、既存ガソリン車を下回る必要があります。
コスト的に有利になれば、一気にエコカーが浸透することは間違いないでしょう。
ここで必要になるのは行政の後押しです。現行でも優遇策は取られていますが、導入へのインセンティブを与えるにはほど遠い水準です。
日本の国益上、脱化石燃料政策は最高レベルのプライオリティと言えます。
産業施策の観点でも、日本の自動車産業の競争力を保持ことは重要でしょう。自動車産業の技術革新が遅れれば、タタ自動車等新興国の超低価格車が市場を席巻して、自動車がコモディティ化するのは目に見えています。
「コンビニ規深夜営業規制」や「サマータイム」など愚にもつかない政策を議論するより、エコカーの普及に注力したほうが、環境のためにも国民のためにもなるでしょう。
参考書籍
2004年時点では、燃料電池車がもてはやされて、電気自動車は日陰者の扱いでした。本書は、表現は過激なところもあり、量産化直前の現時点からみれば古い記述もありますが、4年前に電気自動車の優位性に着目したのは流石です。
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電気自動車のキーデバイスであるリチウムイオン電池は、日本生まれの技術です。
開発者である旭化成の吉野彰氏の著書です。
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