2008.06.30
急騰続く物価-国民生活より「エコ対策」を優先する政府
WTI原油先物は週末も上昇し、一時142ドルに達しています。
この資源インフレにより、日本のデフレ経済も終焉を迎えました。
但し、経済の正常状態としてのインフレではなく、輸入物価上昇に起因するインフレですので、喜ばしいものではありません。
さらに不況が重なれば、スタグフレーションとなります。
5月消費者物価、1.5%上昇=10年2カ月ぶり高水準
総務省が27日発表した5月の全国消費者物価指数(CPI、2005年=100)は、価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が101.6と前年同月比 1.5%上昇し、8カ月連続のプラスとなった。原油高騰や暫定税率復活によるガソリン価格の上昇、相次ぐ食品値上げが大きく影響した。上昇幅は前月を 0.6ポイント上回り、1998年3月(1.8%)以来、10年2カ月ぶりの高水準。
物価上昇の最大要因はエネルギー関連製品の値上がり。ガソリンの上昇率は18.0%と暫定税率が一時失効した4月(0.7%)に比べ大きく跳ね上がったほか、灯油も27.6%と4月並みの伸びを示した。(時事通信06/27)

大企業では多少改善傾向ですが、中小企業を含めた日本全体の賃金上昇率は、諸外国より著しく低い水準です。
さらに、食品・燃料という生活必需品の値上がり率が高いため、低所得者ほど急騰していることになります。
止まらない企業物価高
消費者物価は8ヶ月連続の上昇ですが、企業物価で見ると4年前にデフレは終わっています。企業物価指数:前年比4.7%上昇…5月
日銀が11日発表した5月の国内企業物価指数(05年=100、速報値)は108.7と、前年同月比4.7%上昇した。4年3カ月連続の前年同月比プラスで、4.7%の上昇は石油ショックの影響が残る81年2月以来27年ぶり。
揮発油税の暫定税率が復活したことでガソリン価格は前月比26.7%の大幅上昇。また、原油、鋼材、穀物価格の上昇に伴う価格転嫁が広がりを見せ、前年比で価格上昇した品目の割合が57.5%と、06年1月に同基準を作って以来最高値だった。(毎日新聞06/11)
年率2%前後なら、妥当なインフレと言えるでしょう。
しかし、現在の企業物価上昇率の水準は、5%寸前にまで達しています。「オイルショック」以来の高水準です。
さらに問題なのは、物価上昇のペースが加速している点です。

企業物価が上昇は、輸入物価の上昇に起因しております。
契約通貨ベース(主にドルベース)の輸入物価は、4ヶ月連続で年率20%の上昇です。

拡大する物価上昇の影響
ガソリン・軽油等燃料価格は今月も大幅に値上がりします。<ガソリン>180円台へ 元売り各社が7月も続々値上げ
石油元売り最大手の新日本石油は27日、7月のガソリンの卸値を1リットル当たり8.4円引き上げると発表した。原油高騰が続いていることから他の元売り各社も10円程度の値上げを予定しており、ガソリンスタンドの小売価格(全国平均)は87年の統計開始以来初めて1リットル=180円台に突入する公算が大きい。
月2回卸値を改定している出光興産は同日、7月前半の卸値を7.3円引き上げると発表した。6月後半にも1.7円値上げしており、1カ月で計9円高になる。ジャパンエナジーは10円、昭和シェル石油は9.8円それぞれ7月の卸値を引き上げる方針だ。(毎日新聞06/27)
「物価の優等生」卵まで値上げです。
鶏卵卸値、8月値上げ=1パック30円程度-JA全農
鶏卵販売最大手のJA全農たまご(東京)が、スーパーなど量販店に対する鶏卵の卸値を8月1日から引き上げることが24日、明らかになった。付加価値の高いブランド卵など卸値を一定期間、固定している商品が対象で、1パック(10個入り)当たり30円程度の値上げとなる。
鶏卵卸値の引き上げは、トウモロコシなど飼料穀物の高騰から飼料価格が値上がりしていることが背景にある。長年にわたり販売価格が変動せず、「物価の優等生」といわれてきた鶏卵も、値上げ圧力に対抗し切れない状況だ。
JA全農たまごのブランド卵「しんたまご」は300円前後で販売されており、卸値の値上がり分がすべて転嫁されれば、小売価格は1割程度上昇する。他の鶏卵販売大手も8月に、卸値を同額程度引き上げる意向とみられる。(時事通信06/25)
漁業では休漁の動きが広がっています。
全漁連 20万隻、一斉休漁 来月15日、燃料費補填求め
全国漁業協同組合連合会(全漁連)は25日、16漁業団体傘下の漁船が来月15日に一斉に休漁すると発表した。燃料費高騰による漁業の窮状を訴え、燃料費の補填などを求めるのが目的。国内ほとんどの漁船が休漁し、輸入を除くあらゆる魚介類の水揚げがストップするため、消費者らから不安の声が上がっている。
全漁連などによると、休漁に参加するのは、全漁連や大日本水産会(大日)などの約20万隻と推計される。一斉休漁は1日だけだが、団体や地域漁協によっては、独自の判断でさらに数日にわたって休漁することもあるという。1日で2万~3万トンの水揚げがストップするとみられる。
漁船の燃料となるA重油の価格は5年で2.5倍に上昇し、漁業経営を圧迫している。全漁連などでは今月初めに一斉休漁を検討し、水産庁に燃料費補填などを求めていたが、新たな支援策が打ち出されないことなどから踏み切った。一斉休漁の方針が伝えられると、市場関係者に「魚の価格が一時的に高騰する」と懸念が広がった。今月18、19日、全国のイカ釣り漁船が休漁した際には、東京・築地の中央卸売市場でスルメイカの価格が500円台から一時的に780円まで急騰しており、水産庁では「今回も一時的に値上げするかもしれない」と懸念している。(産経新聞抜粋06/26)
資材高騰は公共工事にも波及しています。自治体レベルでは入札参加者が資材高騰を忌避し、入札が成立しないケースも多発しています。
県公共工事:支払い価格に材料費高騰分を上乗せ--きょうから /宮崎
建設工事の材料費高騰を受けて県は25日から、公共工事の支払い価格に値上がり分を上乗せする「物価スライド」を実施する。県には約9000万円の追加負担となる。
県土整備部によると、適用となるのは同日以降に完了見込みの工事。材料価格の上昇分が、契約額の1%を超えた場合、鋼材と燃料費の増額分を県が支払う。1%以下の高騰分は受注業者が負担する。
公共工事の支払い価格は通常契約時に決まるが、急激に材料費が上がる場合、受注業者にとって採算が取れない。国が今月から同様の措置を取っており、県も導入を検討していた。県は、国が同制度を打ち切るまでは続行する方針。対象を25日以降に完了する約50件の工事と想定して、追加負担を9000万円と試算している。(毎日新聞06/25)
鈍い政府の対応
日本政府は、原油高騰対策に対しては、完全に後手の対応です。政府は6月26日に原油高騰緊急対策を発表しましたが、昨年12月の「緊急対策」のコピーに過ぎません。しかも、「新たな予算措置を行わない」前提です。
原油高騰で政府が緊急対策—高速道路の料金値下げなど検討
政府は26日、首相官邸で原油等高騰に関する緊急対策関係閣僚会議を開き、原油高騰に苦しむ業種別の緊急対策を決めた。
自民、公明両党からの対策強化要請を受けて、政府としての対策としたもので、業種横断的な対策としては、洞爺湖サミットに向けて国際石油市場安定化のために国際社会への働きかけを強化していくほか、中小企業対策として、政府系金融機関によるセーフティネット貸付の融資限度額の別枠・倍増化などを図る。
業種別対策では、運輸業向けに、夜間の高速道路料金割引時間帯の拡大など各種料金引き下げを検討するほか、トラック輸送運賃への燃料サーチャージ制の導入促進を図る。また、トラック運送業燃料費高騰対策推進事業(仮称)を新たに追加し、金融支援も含め中小トラック運送業者を総合的に支援する。このほか、省エネ・新エネ等構造転換対策で、ハイブリッド車や電気自動車など自動車の燃料転換のための補助事業、燃料電池や太陽電池などの開発・促進、バイオエタノールなどエコ燃料利用促進補助事業などが盛り込まれた。(レスポンス06/26)
これでは、「原油高騰緊急対策」ではなく、単なる省エネ推進政策です。
現政権は、よほど「エコ」が好きなようです。
漁業・農業従事者は、原油高騰により利益(収支)が急減し、常態的な赤字(キャッシュアウト)に瀕しています。
商売を続けると、お金が減っていく緊急事態です。
今後、事業を存続できるかどうかの瀬戸際であり、省エネ効果のあるエンジンや農機具への代替という「設備投資」を行う余力など殆どないでしょう。
休漁や漁業関係者の苦境を伝える報道が連日続く中、政府対応の鈍さが目立ちます。
補正予算もようやく検討を開始したようです。但し、地震対策も必要なのでやむなくという消極的スタンスです。
原油高に地震…政府・与党が補正予算検討へ
政府・与党は26日、原油などの原材料価格の高騰や岩手・宮城内陸地震が拡大していることを受け、今年度の補正予算編成の検討に入った。原油価格の高騰が中小企業や農林水産業に与える影響や地震の災害状況を見極めながら、早ければ次の臨時国会での提出も視野に準備を進める。
町村信孝官房長官は26日の会見で補正予算編成について、「まだ必要だとは判断していない。実行していく過程の中ではあるかもしれない」と述べ、原油高騰の影響がさらに広がれば、補正予算で対応する可能性があることを示唆した。
政府は原油高対策として平成19年度の補正予算と20年度予算で計約2150億円を計上したが、物価高に歯止めがかからず、中小企業や農林水産業は深刻な打撃を受けている。こうした状況を受け、自民・公明両党は24日、緊急の支援策を政府に提出し、補正予算を編成するよう申し入れた。加えて、今月14日に発生した岩手・宮城内陸地震の被害も大きく、災害復旧にも多額の費用がかかりそうだ。財務省の津田広喜事務次官は26日の会見で「災害復旧についても当初予算の災害復旧等事業費で対応する」との姿勢を示したが、今年度当初予算で災害復旧に使える約4200億円の範囲内では収まりきらない可能性が強い。
ただ、財政状況が厳しい中で補正に踏み切れば、財源の確保など、政府は難しい財政運営を強いられることになる。(産経新聞06/26)
洞爺湖サミット向けの「エコ対策」に対する熱心さと比較すると、「原油高騰対策」は著しく消極的です。
福田総理が、「暫定税率騒動」の際に、「ガソリン価格が下がると、ガソリンの消費量が増えるので環境に良くない」旨の発言をしていました。
政府は、日本経済や国民生活より、地球環境の方が大事なのかと疑いたくなります。
原油相場の先行き
原油相場については、物議を醸す発言で何かと話題の北畑経済産業省事務次官もコメントしています。原油、「確実に下落方向に」=産消国会合受け-経産次官
経済産業省の北畑隆生事務次官は23日の記者会見で、原油産消国会合で生産増強方針などが示されたことを受け「(原油相場が)直ちに下落するかと言われたら分からないが、確実に下がる方向に動いていく」と述べ、同省が適正水準とみなす1バレル=60ドル程度に将来的には収れんするとの見通しを示した。その上で「『(最高値圏の)140ドルを突破して200ドルにいく』といった分析はもう非現実的になった」と強調した。(時事通信06/23)
価格水準にまで言及しています。まるで原油先物を「空売り」している投資家のようです。
官僚の発言としては、評論家的で当事者意識に欠けるという批判もありますが、必ずしも的はずれとは言えません。
上昇率をみると、原油先物市場がバブル化していることは間違いないでしょう。現在の上昇ペースが2年間続けば、原油価格は500ドルを超えることになります。このときの日本のガソリン小売価格は、リッター600円です。
急騰している相場の上昇率が鈍化すれば、天井確認後、急落することになります。
急騰相場では、「下がる下がる」と言っていれば、いつかは必ず当たります。ただし問題はタイミングで、天井確認までは上昇ペースは鈍化せず、「チキンレース」となります。
今年の秋以降、いつ暴落が発生しても不思議ではないでしょう。特に秋は、株式市場の暴落が生じやすい時期でもあるので、先行きは要注意です。
参考書籍
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このタイミングで「資源株」は微妙なところですが。
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昨今のエコロジーブームに一石を投じる書籍です。
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08.06.04ガソリン170円台-燃料高騰に直面する産業界08.04.14日本を襲うインフレ-「日本の物価は高い」常識の終わり
07.11.3010月の消費者物価-「悪い物価上昇」への警戒強まる
07.10.10値上げ相次ぐ生活必需品、デフレ神話の終わり



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