2008.10.22
アイスランド国家破産-金融立国の崩壊
今回の金融危機は、世界の金融システムに致命的な打撃を与えました。
大国でさえ経済への影響は多大ですが、小国レベルでは国家経済が破綻する状況に陥っている国が続出しております。
つい最近まで、「金融立国」の成功事例とみなされていたアイスランドが、事実上の国家破産に陥っています。
アイスランド:金融危機でIMFなどが6千億円の緊急融資
金融危機で銀行預金が国外に流出するなど苦境に陥っているアイスランドが、国際通貨基金(IMF)などから60億ドル(約6000億円)の緊急融資を受ける見通しとなった。英フィナンシャル・タイムズ紙が20日、報じた。
IMFが10億ドル拠出するほか、スカンジナビア諸国などIMF以外の国が残り50億ドルを負担する。日本が支援の枠組みに加わる可能性もある。アイスランドが支援を求めていたロシアは金融危機に翻弄されており、加わるかどうかは不明。
アイスランドは金融非常事態を宣言し大手行の国有化を進めているものの、金融機能はまひ状態で、外貨不足で物資を輸入できない企業などが出ている。(毎日新聞10/21)
アイスランドは、政府債務(国債)だけは、IMF若しくはロシアからの借り入れで乗り切ろうとしています。
但し、同国金融機関が集めた外国人の預金は引き出すことが出来ず、「預金封鎖」の状態です。
アイスランド政府は、「民間銀行の借金を政府(国民)が払う義務はない」と責任回避の構えですが、対外的には債務不履行(デフォルト)とみなすでしょう。
アイスランドの概要
アイスランドは、グリーンランドの東方、英国の北西沖に位置する島国です。面積10.3万km²で北海道の1.3倍ほどですが、人口は31万人と北海道の6%程度しか住んでいません。
同国は地政学上の要地でもあります。

第2次世界大戦時に、かつての宗主国デンマークがナチスドイツに占領されたことから米軍基地(ケフラヴィーク空軍基地)が置かれ、第2次世界大戦・米ソ冷戦の重要な戦略拠点となっていました。
しかし、冷戦終結に伴う米軍の大再編により基地は閉鎖されました。なおアイスランド自体には軍隊は存在しません。
産業は、かつては漁業が主体でした。現在は、金融を中心としたサービス業やアルミ精錬も盛んです。
観光資源も豊富で、大陸プレートの境界直上に位置するため火山や温泉や間欠泉が多く、高緯度地域のため氷河やオーロラ、ホエールウオッチング等でも知られています。
アイスランド経済の俯瞰
アイスランドは、以前は欧州でも最貧国でした。それが大きく変わったのは1990年代以降です。
一連の構造改革(財政制度改革・国営企業民営化・市場競争原理導入)と、1993年のクローナ切り下げにより、1996年以降、平均4%を超える高い経済成長を維持してきました。
産業では、安価な地熱エネルギーを利用したアルミ精錬等のエネルギー集約産業の大規模な投資プロジェクトが進んだことに加え、金融部門に注力し、2007年にはGDPの3割を金融部門が占めるまでに成長しました。
「金融立国」にて成功したアイスランドは世界の代表的な最富裕国となりました。
国民1人あたりのGDPは、1996年以降は、OECD諸国の中のベスト10に入り続け、2005~06年には3位となります(出典:内閣府統計情報)。
国民1人あたりの名目GDPは53,446ドルで、18位の日本が34,252ドルですから56%も上回っています。
世界競争力年鑑(スイスIMD発行)では、2005年~06年は4位、2007年7位と常に上位にランクされてきました(ちなみに日本は20位近辺です)。
アイスランド国債は、長らく最上位格(Aaa:ムーディーズ)でした。
米国債と同ランクであり、日本国債とは比較にならないほど安全な金融商品と見なされていました。
最大手のカウプシング銀行を含むアイスランドの主要銀行3行も、2007年2月26日に最上位格(Aaa)となっていました。
同国通貨のクローナは、主要通貨に対して強含みのトレンドが続いていました。
通貨危機への軌跡
発端
クローナは、昨年8月のサブプライムローン問題の顕在化以降、急激な下落傾向へと転換します。年初から4ヶ月間で、対ユーロで2割以上下落しました。
アイスランド政府は外貨不足に陥り、北欧3国から15億ユーロを借り入れます。
アイスランドに緊急融資、経済破たん回避へ北欧3カ国が15億ユーロ
アイスランドは16日、デンマークとスウェーデン、ノルウェーの中央銀行から緊急融資15億ユーロ(約2430億円)を受け入れた。通貨クローナを支え、同国経済の破たんを阻止する。
クローナは今年に入ってから対ユーロで最大26%急落。北欧3カ国が融資枠を設定したことが好感され、16日の市場では一時、前日比4.7%高となった。
ダンスケ銀行(コペンハーゲン)の新興市場担当チーフストラテジスト、ラース・クリステンセン氏は緊急融資について「金融市場の安定に役立つが、アイスランド経済の基本的な不均衡は是正できない」と指摘した。
緊急融資によりアイスランドの外貨準備高はほぼ倍増し、クローナを下支えするとともに、同国中銀は利上げを休止できるようになる。アイスランド中銀は、同国経済が一連の利上げで来年にリセッション入りするとの見通しを示している。同中銀は政策金利を過去最高水準となる15.5%に引き上げたにもかかわらず、4月のインフレ率は18年ぶり高水準の11.8%に上昇した。
世界的な信用収縮の影響でアイスランドの商業銀行が同国中銀に援助を仰ぐとの懸念が強まる一方、中銀には支援するだけの十分な資金がないことから、クローナ相場は下落していた。4月末時点の外貨準備高は2068億クローナ(約2930億円)となっている。
アイスランドの3大銀行の資産総額は11兆4000億クローナと、同国経済の9倍近い規模。最大手のカウプシング銀行の保有資産の87%は外貨で構成されている。(ブルームバーグ05/16)
その4日後の5月20日、ムーディーズはアイスランドをAa1に格下げします。
アイスランドの債務格付けを「Aa1」に引き下げ=ムーディーズ
ムーディーズ・インベスターズ・サービスは20日、アイスランド国債の格付けを1ノッチ引き下げ、上から2番目の「Aa1」とした。政府は不安定な銀行システムを支援する責任があるとしている。
ムーディーズのソブリン格付けアナリストは「今回の格下げは、銀行システムの不安定性を受けた、可能性は低いがゼロではない外貨需要の規模を考慮し、アイスランドの流動性が制約される可能性を反映している」と説明。
アイスランド中央銀行は前週末16日、アイスランドクローナの下落阻止に向け、スウェーデン、ノルウェー、デンマークの3中銀とスワップ協定を結んだ。これを受け、アイスランドの銀行セクターに対する投資家の懸念が若干和らいだ。(ロイター抜粋05/21)
この格下げで、格付け機関は、通貨危機の可能性を「可能性は低いがゼロではない」と消極的ながら、初めて認めました。
外貨が確保されたことで、クローナは小康状態を維持します。同国の政策金利は15.5%、インフレ率は14%に達しました。
通貨崩壊
9月29日、アイスランド政府は、同国第3位のグリトニル銀行の国有化を発表しました。アイスランド政府、グリトニル銀行を国の管理下に
アイスランド政府は29日、同国第3位のグリトニル銀行株式の75%を取得し、政府管理下に置いたと発表した。取得額は6億ユーロ(8億7800万ドル)。
グリトニル銀によると、ここ数日で資金繰りが悪化した。ただ、主力銀行業務は健全だとしている。同銀は政府に対し新株を発行する。
政府の発表を受け、アイスランド金融サービス機構(FSA)はグリトニル銀株の売買を一時停止した。同行の金融商品の取引も一時停止。投資家利益保護のため、グリトニル銀から発表があるまで取引を停止するとしている。
米国発の金融危機で米国の金融機関が相次いで破たん。影響は欧州の金融機関にも及んでいるが、北欧の銀行破たんはグリトニル銀が初めて。グリトニル銀国有化の発表を受け、アイスランドクローナは対ユーロで下落、最安値を更新した。(ロイター09/29)
これ以降、クローナは一気に崩壊過程に入ります。
日本でも、アイスランド・クローナは、北欧の高金利通貨としてスワップ金利狙いのFX投資家に人気でした。
ところが、10月1日に日本で唯一クローナのカバー先だったサクソ銀が、クローナ取引を停止して残存ポジションを強制決済したために、多くのクローナ投資家が損失を被る事態が発生してます。
10月6日、ついにアイスランド政府は、「金融非常事態」を宣言します。
アイスランド、民間銀を政府管理下に 金融非常事態を宣言
アイスランド政府は6日夜「金融市場の混乱で我が国は危機に直面した」と非常事態を宣言し、民間銀行を政府管理下に置く法律を緊急に制定した。すべての銀行を国有化し、海外資産売却など再建策を政府が手掛ける。預金は全額保護する方針を示している。
ハーデ首相がテレビで国民に「アイスランドの銀行が6日に金融市場で資金を調達できなくなった」と報告。同国の国民総生産(GNP)の何倍もの負債を持つ民間銀行の「実質破綻」により「最悪の場合、銀行とともに国家が破産する危険もある」との認識を示した。 (日本経済新聞10/06)
10月7日、追いつめられたアイスランド政府は、なりふり構わぬ防衛策を講じます。
①同国第2位のランズバンキ・イスランズ銀行を国有化し、②固定相場制を実施、③ロシアへ援助要請を行いました。
アイスランド、大手銀を管理下に ロシアからの緊急融資交渉か
米国発の国際金融危機に伴う預金流出に襲われるアイスランドの中央銀行は7日、経営悪化に直面する同国2位の銀行、ランズバンキを管理下に置くと発表した。国営ラジオが報じた。同国政府は先月下旬、別の銀行を事実上、国有化すると述べていた。
ランズバンキでは預金の引き出しをすべて中止している。中央銀は、ユーロなどに対する下落が激しい通貨クローナの為替レートを固定するとも述べた。
アイスランド政府はまた、ロシアから約40億ユーロ(約5600億円)の緊急融資を受ける交渉を進めていることを明らかにした。国際金融危機を受け、他国に支援を求める局面に発展してきた。ただ、ロシアはこれを拒否したとの情報もある。 (CNN.co.jp10/07)
10月8日、アイスランド中銀は、固定相場制の廃止を余儀なくされます。
同国は、自国通貨クローナの防衛することができませんでした。
アイスランド、わずか1日で固定相場制を廃止-ムーディーズが格下げ
アイスランド中央銀行は8日、前日に導入した自国通貨クローナの対ユーロ固定相場制度をわずか1日で廃止した。1ユーロ=131クローナという水準を防衛できなかったことが原因。
同中銀がウェブサイト上で発表した声明によると、「当面は」固定相場水準でのクローナ防衛はしない方針。米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスはこの日、同国の国債格付けを「A1」に指定、従来の「Aa1」から引き下げた。
ブルームバーグのデータによると、中銀の声明発表後、クローナは最大手カウプシング銀行など同国の銀行の間で1ユーロ=165クローナの水準で取引されている。(ブルームバーグ10/08)
同日、ムーディーズ社がアイスランド政府の国債格付けをAa1からA1に3ノッチ格下げしました
ムーディーズとフィッチ、アイスランドを格下げ
ムーディーズ・インベスターズ・サービスは8日、アイスランドの格付けを「Aa1」から「A1」に3段階引き下げた。世界的な金融危機により、アイスランド政府の財政状態への懸念が強まっていることが引き下げ理由としている。
ムーディーズのアイスランド担当アナリストは「ここ数週間、世界的に信用市場が機能不全を起こしており、アイスランドの銀行はこの影響を受け、政府の財政安定化も困難になっている」と指摘した。
政府債と外貨銀行預金のカントリー・シーリングも引き続き、引き下げ方向で見直すという。
フィッチ・レーティングスもこの日、同国が深刻な景気後退に直面しているとして債務格付けを「Aマイナス」から「BBBマイナス」に引き下げた。(ロイター10/09)
10月9日、アイスランド政府は最大手カウプシング銀行の国有化を決定します。
さらに、「最後の買い手」のアイスランド中銀がクローナ防衛を断念したことで為替取引がストップ、通貨クローナは崩壊しました。
アイスランド・クローナ取引がゼロに-国内銀最大手の政府管理入り後
アイスランドの通貨クローナの取引が9日、全く行なわれなくなった。同国の銀行最大手、カウプシング銀行が政府管理下に入ったとの発表を受け、取引が止まった。
ノルデア銀行(コペンハーゲン)とTDセキュリティーズ(ロンドン)によると、この日の外国為替市場でクローナのスポット取引は成立していない。ノルデアによると、最後に行なわれたスポット取引での相場は1ユーロ=340 クローナだった。(ブルームバーグ10/09)
通貨崩壊後
アイスランド政府は、同国の主要銀行をすべて国有化しました。同国政府は、預金保護を表明していますが、あくまでも国内預金だけです。
外国人の預金は保護対象とならず、現時点では預金の引き出しもできません。
「預金封鎖」です。
アイスランドの銀行は、同国GDPの12倍に相当する約610億ドル(約6.2兆円)の債務を抱えており、到底政府が返済できる規模ではありません。
同国の銀行には英国の個人や公的機関も預金しております。
アイスランド政府は「踏み倒す」方針ですが、これに反発した英国政府がアイスランドの銀行の資産を「差し押さえ」てしまい、国際摩擦に発展しています。
金融危機で冷戦状態に 英がアイスランド銀行の資産凍結
米国発の金融危機で苦しむ英国とアイスランドの関係が急速に冷え込んでいる。アイスランド政府が、経営破綻した同国の銀行に預けていた英国人や団体の預金を補償できないと表明したことに、英国側が反発。反テロ法を持ち出して、英国内にあるアイスランドの銀行の資産を凍結に踏み切る対抗手段に訴えた。
問題の発端は、アイスランド政府が7日、同国2位の大手ランズバンキ銀行を政府管理下に置いたことだった。
英国で営業しているネット銀行「アイスセーブ」など同行の子会社には、高い金利をあてこんで、アイスランドの人口に匹敵する約30万の英国人・団体が口座を設けていたが、アイスランド政府が口座を凍結。英国人も預金を引き出せなくなってしまった。
英政府は自国民の預金保護をアイスランド側に要請したが、らちがあかず、ダーリング英財務相が「アイスランド政府は補償する気がない」と公言。英政府として「英国民の個人口座は全額補償する」と発表し、預金者の不安の火消しに追われた。
ところがその後、口座を凍結されたアイスランド系の銀行には、英国の地方自治体やロンドン交通局など100以上の団体も約10億ポンド(約1700億円)を預けていたことが発覚。野党などから、個人に限らず、すべての口座の保護を迫られている。
腹の虫が治まらないブラウン英首相は「アイスランド政府はアイスランド国民だけでなく、英国までも裏切った」と激しい怒りをぶつけた。8日には、9・11テロ後に成立した、国家に危機が迫っていると判断した時にテロリストらの銀行口座を緊急に凍結できる規定を盛り込んだ反テロ法を適用し、アイスランドの銀行が英国内に持つ資産を凍結させてしまった。
これに対してアイスランドのホルデ首相は「英国が我々をテロリスト扱いすることは不愉快だ」と反発している。(朝日新聞10/12)
アイスランドの銀行には日本も引っかかっています。
アイスランド最大手カウプシング銀行は、06年10月から07年6月にかけて、総額780億円の「サムライ債」を発行しており、これがデフォルトの危機にあります。
アイスランド大手銀のサムライ債が利払い遅延 猶予期限は27日
アイスランドの最大手銀行であるカウプシング銀行が2006年10月に発行した円建て外債(サムライ債)で、利払いの遅延が発生していることが明らかになった。20日に利払い日を迎えたが、支払われなかった。7日間の猶予期間を過ぎても支払われなければ、債券の契約上の「債務不履行(デフォルト)事由」に当たる。
猶予期限は27日。仮にデフォルトとなれば、サムライ債としては、経営破綻した米リーマン・ブラザーズ債に続く事例となる。
発行時の共同主幹事だった大和証券SMBCと野村証券、元利払いの代理人である三井住友銀行はいずれも、20日時点で利払いがなされなかったことを確認した。(日本経済新聞10/21)
そのほかにも、クローナ建債券を個人投資家向けに販売した証券会社もあります。年利10%を超える高い利率に惹かれて購入した方もいるでしょう。
金融のグローバル化により、損害の連鎖がどのように広がっていくかを予想することが困難になっています。
参考書籍
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参考記事
08.10.14史上最大の作戦-世界の金融システム防衛戦08.10.07世界金融危機-協調と不協和音が入り乱れる金融市場
08.10.03銀行破綻ドミノ倒し-欧米大手金融機関の連続破綻
08.04.15欧州経済、波乱の兆し-信用収縮と住宅価格の下落



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外為市場の未来を先読みする材料
長く市場と付き合うための礎だ
内容が無いにも程がある





[...] このあたりの事情については、「平和の国アイスランドが“倒産”に追いつめられるまで|R25」さんや「アイスランド国家破産-金融立国の崩壊|投資経済データリンク」さんが詳しく書かれているので、詳細を知りたい方はそちらも参考にしてみてください。 [...]
更新: 2008.12.7 14:18:47 by アイスランドの凋落とその教訓 | De la tierra vientosa...