2009.01.05
イスラエル、ガザ侵攻-戦火止まぬ中東情勢
年末年始にかけて中東情勢が緊迫化しています。
歴史的に見ても、経済が悪化するに従って、軍事的緊張も増幅していきます。
今回の紛争が、大きな戦争に直接繋がる可能性は薄いと思われますが、真に世界経済が「大恐慌」に陥るなら、世界大戦級の戦争が発生するリスクも高まりますので注意が必要でしょう。
ガザ紛争の経緯
2008年12月19日に、イスラエルとハマスが結んでいた半年間の停戦が失効し、その直後から双方の攻撃の応酬が続いていました。12月24日から25日にかけて、ハマスはイスラエルに対してロケット弾等による攻撃を行いました。
ハマス、ガザから迫撃砲攻撃 イスラエル側は反撃示唆
イスラエルとの半年にわたる停戦の終了を宣言したイスラム過激派ハマスが24日から25日にかけて、支配地域のパレスチナ自治区ガザからイスラエル側へ、100発近いロケットや迫撃砲を撃ち込んだ。死傷者は出ていない模様だ。
AP通信によると、イスラエルのバラク国防相は「(ハマスは)重大な代償を支払うだろう」と警告した。
こうした事態を受け、イスラエルのリブニ外相は25日、停戦を仲介したエジプトを訪問し、ムバラク大統領らと会談。エジプト側は停戦延長への仲介努力を続ける考えを示したが、リブニ外相は「ハマスの攻撃を止める必要がある」と強調し、本格的な攻撃も辞さない姿勢を示唆した。
エジプトのメディアによると、ムバラク大統領は会談の中で、ガザの封鎖を続けるイスラエルに対し、援助団体などによる人道支援物資の輸送は認めるよう求めた。ハマスは停戦終了の理由として、封鎖緩和の約束が得られなかったことを挙げている。
一方、リブニ外相は記者会見で「ハマスによるガザ支配が問題だ」と強調。「24日の攻撃拡大には耐えられない。ハマスは、我々が現状をこれ以上受け入れ続けると考えてはならない」と述べた。(朝日新聞08/12/25)
2008年12月27日、イスラエルは、ハマスへの報復のため、拠点であるガザに対して大規模な空爆を行いました。
イスラエル、ガザ空爆 205人死亡、ハマスが報復宣言
イスラエル軍は27日、パレスチナ自治区ガザで、同地区を支配するイスラム過激派ハマスの複数の治安拠点を空爆し、AFP通信は救急筋の情報として、少なくとも205人が死亡、300人以上が負傷したと伝えた。イスラエルの報道によると、軍の攻撃による1日の死者としては67年の第3次中東戦争後、最大という。
ハマスは報復のためイスラエル領内にロケット弾を撃ち込み、女性1人が死亡。さらに「あらゆる手段を用いる」と宣言した。今後、自爆テロを含めた攻撃を強めるのは必至だ。両者の間では半年間続いた停戦が失効したばかりで、全面衝突に発展する懸念が強まっている。
ハマス警察の報道官はロイター通信に対し、空爆を受けた警察施設では訓練を終えた警察官の卒業式典が開かれていたと話した。死者には警察長官も含まれるという。
一方、イスラエル軍は声明を出し、今回の攻撃は「ハマスのテロ活動の結果だ」と強調。空爆の対象は、テロ活動の訓練キャンプと武器弾薬の貯蔵庫だと説明した。さらに「必要があれば攻撃を拡大する用意がある」と警告した。
アラブ連盟(21カ国とパレスチナ解放機構で構成)は同日、緊急声明を出してイスラエルを強く非難し、国連に対し安全保障理事会を開催するよう求めた。 (朝日新聞08/12/28)
年明け3日には、イスラエル軍がガザへ侵攻、地上戦が開始されました。
イスラエル軍、地上部隊によるガザ侵攻開始
イスラエル軍は3日夜、イスラム原理主義組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ北部で、地上部隊の侵攻作戦を始めた。先月27日に大規模な空爆を始めてから、地上部隊がガザ地区に入るのは初めてで、イスラエル軍による攻撃は8日目にして新たな段階に入った。
イスラエル軍は、ガザ地区北部の4カ所から戦車や歩兵隊による侵攻を開始。同侵攻で7人が死亡し、先月27日に始まった攻撃によるパレスチナ側の死者は450人以上に達した。
これに合わせて、イスラエルは数万人の予備兵を招集。軍スポークスマンは、作戦が「かなりの長期」続くとの見通しを明かした。
一方、地上侵攻を受けて、国連の安全保障理事会は4日未明から緊急協議を予定している。(ロイター01/04)
ガザ紛争の前哨戦
ハマスは、1987年に創設されたパレスチナのイスラム原理主義組織で、正式名称は「イスラム抵抗運動」と言います。ハマスとイスラエルは、「宿敵」であり、従前から度々戦火を交えてきました。
特に、2007年6月にハマスがガザ地区を制圧し、穏便派ファタハを追放して同地区を実効支配し、イスラエルがガザ地区を封鎖してからは、紛争がエスカレートしていました。
なお、ガザ地区は地図上は狭い地域ですが、人口150万人の大都市です。
2007年にも、今回と同様の経緯で小規模紛争が発生しています。
イスラエル軍がガザ空爆、武装メンバー7人死亡
イスラエル軍は6月30日、パレスチナ自治区ガザの2か所を空爆し、武装メンバーの7人が死亡した。
ガザ南部ハンユニスでは、走行中の車がミサイル攻撃を受け、過激派組織「イスラム聖戦」の3人が死亡。同国軍は、「自爆テロ攻撃を計画していた」と説明している。また、ガザ中部では武器製造工場と見られる建物が爆撃され、アッバス自治政府議長が率いるファタハ系「アルアクサ殉教者旅団」のメンバー1人を含む4人が死亡した。
同国軍は、イスラム原理主義組織ハマスが6月中旬にガザを制圧した後も、ガザの武装勢力に対する攻撃を断続的に続けており、ハマス包囲網を強化する方針と見られる。(読売新聞07/07/01)
この際もイスラエル地上軍は、越境攻撃を行っています。
イスラエル軍がガザ南部侵攻、武装勢力ら10人殺害
イスラエル軍は6日、パレスチナ自治区ガザ南部を攻撃し、武装勢力のメンバーら計10人を殺害した。
イスラエル軍は同日朝、戦車や軍用ブルドーザーでハンユニス市近郊に侵攻、武装勢力と銃撃戦となり、4人が死亡。続いてガザ地区南部とイスラエルとの境界付近で武装勢力の車両2台をミサイルで攻撃し、乗車していた6人が死亡した。イスラエル軍は、6人が「爆発物を車に載せ、イスラエル領内の軍基地攻撃を狙っていた」と発表した。
死亡したのは、アッバス自治政府議長率いるファタハ系の「アルアクサ殉教者旅団」と、イスラエルへのロケット弾攻撃を続ける「イスラム聖戦」のメンバーとみられる。(読売新聞07/09/07)
イスラエルは人口700万人足らずの小国に過ぎません。
イスラエルは、平和な状態が続けば、周辺アラブ諸国の文化圏に飲み込まれるのは必定で、「イスラエル」としてのアイデンティティを保つためには、周辺諸国と対立せざるを得ません。
さらに国土は狭い地域に住民・産業基盤が密集しているため、国土への侵入を許せば国は崩壊してしまいます。
軍事的に「専守防衛」は不可能で、戦闘を国外で行うために「先制攻撃」を選択することになります。
戦争を肯定する訳ではありませんが、イスラエルが定期的に周辺国への侵攻を繰り返すのは「防御」のためなのでしょう。
国際情勢
中東諸国
今回の紛争に関しては、アラブ諸国は表面的にはハマス支持ですが、実質的にハマス側についている訳ではありません。現時点で、ハマスと軍事同盟を結びイスラエルとの抗戦を企図している主権国家はありません。
エジプトは、同国国境とガザ地区を閉鎖したままですし、産油国は紛争が長引いて暴落した原油価格が高騰することを望んでいるでしょう。
ハマス支持の最右翼はシリアとイランですが、そのイランでさえ口先での介入に留まります。
ガザ地上侵攻:イランが米欧やアラブ批判
<-前略-> イランの最高指導者ハメネイ師はイスラエル軍の空爆開始翌日の先月28日、声明でイスラエルを「血に飢えたオオカミだ」となじる一方、「より大きな災いは、一部のアラブ・イスラム諸国の沈黙だ。それは(イスラエルへの)称賛に等しい」と断罪した。<-中略->
イランのモッタキ外相は2日、一部アラブ諸国を「裏切り者」と批判。特にエジプトに対し「イスラエルのガザ封鎖に加担している」と指弾した。エジプトのアブルゲイト外相は「イランはスローガンを叫ぶ以外、パレスチナ問題の解決には何もしていない」と反発している。(毎日新聞01/05)
米国
米国は、イスラエル支持です。これは当然でしょう。ハマスを一方的に非難=市民の犠牲には「遺憾」-米大統領
ブッシュ米大統領は3日の週末ラジオ演説で、イスラム原理主義組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザに対するイスラエル軍の空爆を取り上げ、「最近の暴力はハマスによって引き起こされた」とハマスを一方的に非難した。ホワイトハウスが2日、演説内容を公表した。今回の軍事行動をめぐって大統領が公の場で発言したのは初めて。
ブッシュ大統領は、2007年6月にガザを制圧したハマスが恒常的に停戦を破り、イスラエル領内にロケット弾を撃ち込んでいたために、同国が軍事行動を起こしたと米国民に説明。「ハマスのテロリストたちは民間居住区に隠れ、無実の市民を危険にさらしている」と述べ、イスラエル擁護の立場を鮮明にした。ただ、空爆で市民に犠牲が出ていることには「遺憾」の意を表明した。
その上で大統領は「米国は意味ある停戦の実現に向けた外交努力を主導している」とし、ハマスへの武器流入停止を監視するメカニズムを伴う停戦合意が必要だと強調した。(時事通信01/03)
欧州
欧州各国政府は、基本的にはイスラエル寄りです。しかし、多数のイスラム移民を抱えてしまった結果、明確なイスラエル支持を行えない状況に陥っています。
【ガザ侵攻】欧州で非難拡大「即時停戦が必要だ」
欧州では、パレスチナ自治区ガザ地区へ地上侵攻したイスラエル軍を非難する声が強まっている。ミリバンド英外相は3日夜、「即時停戦が必要だ」として軍事行動のエスカレートを非難する声明を発表。クシュネル仏外相も「フランスはイスラエルの地上侵攻を非難する」と述べた。
在英イスラエル大使館前では同日夜、5000人がガザ侵攻に抗議、イスラエル国旗を燃やしたり、花火を打ち上げるなどして警備の警官隊とにらみ合った。侵攻前の同日昼には6万人(主催者推定)がロンドン市内をデモ行進。英首相官邸周辺の道路ではブッシュ米大統領に靴を投げたイラク人記者をまねて1000足の靴が投げつけられた。
パリでは2万1000人がデモ行進に参加。ベルリン、ローマ、アテネなど欧州各地で抗議活動が繰り広げられた。(MSN産経ニュース)
国によっても温度差が大きく、EUとして統一した外交力を行使するのは困難でしょう。
原油価格
WTI原油先物市場は、昨年12月19日には32ドル台にまで下落していましたが、現在47ドルまで反転急騰しています。
ガザ紛争の展開によっては、原油価格が乱高下するのは必定で、世界経済の新たな波乱要因となる恐れもあります。
参考書籍
アメリカはなぜイスラエルを偏愛するのか―超大国に力を振るうユダヤ・ロビー
著者/訳者:佐藤 唯行
出版社:ダイヤモンド社( 2006-12-01 )
定価:¥ 1,680
Amazon価格:¥ 1,680
単行本 ( 228 ページ )
ISBN-10 : 4478170576
ISBN-13 : 9784478170571
アラブとイスラエル パレスチナ問題の構図 (講談社現代新書)
著者/訳者:高橋 和夫
出版社:講談社( 1992-01-16 )
定価:¥ 735
Amazon価格:¥ 735
新書 ( 264 ページ )
ISBN-10 : 4061490850
ISBN-13 : 9784061490857
著者/訳者:押原 譲
出版社:講談社( 2006-09-16 )
定価:¥ 1,470
単行本 ( 381 ページ )
ISBN-10 : 4062136198
ISBN-13 : 9784062136198
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更新: 2009.01.6 2:17:33 by News » ガザ侵攻について
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更新: 2009.09.18 12:05:37 by 匿名