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2009.01.07

史上最大の詐欺事件-ナスダック元会長による4.5兆円「ネズミ講」

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 不況期になると、好況期には隠れていた不正や欺瞞が明らかになることが多々あります。
  
 今回の不況は、「100年に1度」のレベルであるだけに、「100年に1度」の仰天事が起こるのは当然なのでしょう。
  
 昨年末に、米国の史上最大の詐欺事件が発覚し、ナスダック証券取引所の元会長のバーナード・メードフ氏がFBI(米連邦捜査局)に逮捕されるという前代未聞の展開になっています。

米史上最大4兆5千億円詐欺=ナスダック元会長逮捕
 ウォール街(米金融街)の重鎮として知られるバーナード・メードフ氏の運用する投資ファンドが、高利回りを約束しておきながら、実は500億ドル(約4兆5000億円)を超える損失を隠していたことが判明、同氏は12日までに連邦捜査局(FBI)に逮捕された。米メディアによると、詐欺事件としては米史上で最大規模。市場関係者は、投資離れに拍車が掛かりかねないと懸念を強めている。
 捜査当局によると、同氏が運営する投資ファンドは、損失が拡大していたにもかかわらず、毎年10%の利益を上げていると宣伝。投資家から資金を集め、配当や解約金の支払いに充てていた。同氏は「自分のやっていることは詐欺と変わりはなかった」と非を認めているという。(時事通信08/12/12)

  
 被害額は、現時点でも4.5兆円というとてつもない金額です。
  
 米国金融業界の重鎮の逮捕は、一詐欺師による単なる詐欺事件とは次元が異なります。
 米ウォール街の「信用」に対する深刻な打撃となるのは避けられないでしょう。

 特に米監督当局の責任は重いでしょう。
 一部のSEC職員が、マドフ元会長のファンドの不正を知りながら、見逃していたという疑惑もあります。

米当局、巨額詐欺事件のマドフ容疑者を16年間で8回取り調べ=WSJ紙
 ウォールストリート・ジャーナル紙は、米ナスダック・ストック・マーケット(現ナスダックOMXグループ)のバーナード・マドフ元会長による巨額詐欺事件をめぐり、米証券取引委員会(SEC)などの監督機関は16年間に少なくとも8回、バーナード・マドフ証券の取り調べを行っていたと報じた。
 SEC幹部は、マドフ容疑者のビジネス手法は「かなり異常」とするニューヨークのヘッジファンドからの電子メールを受けて調査したという。
 証券業界の監視機関である金融業界規制委員会(FIRA)は2007年に、同社の一部には顧客が存在しないもようだと報告していた。 
 同紙によると、マドフ容疑者は少なくとも2回、SECの聴取を受けたが、1970年代に始まったとされる500億ドルの詐欺の発覚には至らなかった。
 SECのコメントは得られていない。(ロイター01/05)

  
 今回の詐欺の手口は、非常に単純です。
 年平均10%という高利回りで投資家を募り、集めた資金を従前の顧客の配当に回し、また顧客を紹介してもらうことを繰り返すというものです。
  
 これを1970年代から行っており、長期間発覚しなかったのは、マドフ氏の華麗な経歴と信用のためでしょう。
  

ネズミ講

 狭義の「ネズミ講(無限連鎖講)」とは、親会員が子会員から金を集め、子会員がさらに孫会員を増やして、無制限の増殖していくシステムです。
  
 今回の詐欺は、法律上の無限連鎖講ではありませんが、新規会員を集め続けなければ、配当を維持できない点で、広義の「ネズミ講」と言えるでしょう。
  
 日本では、詐欺的金融商品を「ネズミ講」と呼びますが、米国では1920年にボストンで発生した巨額詐欺事件の首謀者である天才的詐欺師チャールズ・ポンジー(Charles Ponzi)にちなんで、「ポンジー」と呼ばれます。

 日本における最も有名な詐欺事件は、1967年から1970年代初頭にかけて行われた「天下一家の会事件」でしょう。
 実は、首謀者の内村健一は、脱税の罪には問われましたが、詐欺罪にも出資法違反にも問われていません。
 法の抜け穴をつかれたことを受け、1978年に無限連鎖講防止防止法が制定されています。
  

マドフ詐欺事件の被害者

 今回の巨額詐欺事件では、有力金融機関や著名投資家もかなりの被害を受けています。
 なお、投資額は報道等による概算額です。
投資家名 投資額
フェアフィールド・グリニッジ(米ヘッジファンド) 7000億円
キンゲート・マネジメント(米ヘッジファンド) 3300億円
トレモント(米ヘッジファンド) 3100億円
サンタンデール(スペイン最大手銀行) 2900億円
バンク・メディチ(オーストリア銀行) 1900億円
アスコット・パートナーズ(米ファンド) 1700億円
アクセス・インターナショナル・アドバイザーズ(米ヘッジファンド) 1300億円
フォルティス銀行(オランダ等銀行) 1300億円
HSBC(英銀) 940億円
ナティクシス(仏投資銀) 580億円
ロイヤルバンク・スコットランド(英銀) 570億円
BNPパリバ(仏銀) 430億円
BBVA(スペイン第2位の銀行) 380億円
マン・グループ(英:欧州上場ヘッジファンド最大手) 330億円
野村HD(日本) 275億円
あおぞら銀行(日本) 124億円
アクサ(仏生保最大手) 120億円未満
ユニクレジット(イタリア最大手銀行) 92億円
 この他にも、大学・慈善団体などの団体、映画監督のスピルバーグ氏や俳優のケビン・ベーコン夫妻など著名人も被害を受けていると報道されています。
 変わったところでは、IOC(国際オリンピック委員会)も約4億円の被害を被っています。
   
 自殺者まで発生してしまいました。

マドフ元会長詐欺事件で14億ドル損失した投資家が自殺
 米ナスダック・ストック・マーケット元会長のバーナード・マドフ容疑者によるねずみ講詐欺事件で、被害者となった投資家で投資ファンド「アクセス・インターナショナル・アドバイザーズ」の創業者デ・ラ・ビルシェ氏(65)が23日午前にニューヨーク市内オフィスで自殺したことが明らかになった。
 ニューヨーク市警によるとオフィス内でビルシェ氏が睡眠薬を服用し、両手首を切って自殺したという。マドフ容疑者による総額500億ドルのねずみ講詐欺事件で、ビルシェ氏の被害額は14億ドルにも上るという。なお、自殺に関連する遺書は見つかっていない。ヒルシェ氏は22日夜、オフィス清掃業者に遅くまで仕事をするから夜7時までに帰ってほしいと告げた13時間後に自殺したという。(IBTimes08/12/24)

  
 公的管理となった銀行もあります。

マドフ詐欺事件:オーストリア当局、バンク・メディチを公的管理下に
 オーストリア金融市場当局(FMA)は2日、同国のプライベートバンク、バンク・メディチを公的管理下に置いたと発表した。米ナスダック・ストック・マーケット(現ナスダックOMXグループ)のバーナード・マドフ元会長が関与していた「ねずみ講」に似た手口の金融詐欺事件で、バンク・メディチはマドフ容疑者が運用するファンドに21億ドル(約1909億円)投資していた。同行のピーター・シャイトハウアー最高経営責任者(CEO)は辞任した。
 FMAは発表文で、FMA監督官のゲルハルト・アルテンバーガー氏に債権者の利益と同行の資産を保護するよう命じたことを明らかにした。FMAは投資銀行の顧客利益を保護するため、最大18カ月間にわたり公的に管理する権限を有する。
 バンク・メディチは昨年12月16日、傘下のファンド2本が運用資産のすべてをマドフ容疑者のファンドに投資していたことを明らかにした。規制当局への提出文書によると、同行は2006年末にアイルランド籍のファンドの経営権を獲得。事情に詳しい関係者2人が匿名を条件に話したところによれば、バンク・メディチは依然として同ファンドを運営している。 (ブルームバーグ01/03)

  
 日本企業も、現時点で9社が損害を受けております。

日系企業、9社が被害=米巨額詐欺事件
 米証券界の実力者、バーナード・メードフ容疑者による巨額詐欺事件で、少なくとも9社の日系金融機関が被害を受けていたことが分かった。2日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが伝えた。
 被害が最も大きいとみられるのが野村ホールディングスで、総額3億0400万ドル(約275億円)の資産が損失の危険にさらされているという。次いであおぞら銀行(1億3700万ドル)、住友生命保険(2200万ドル)、三井住友海上火災保険(880万ドル)、あいおい損害保険(110万ドル)、明治安田生命保険(110万ドル)、太陽生命保険(22万ドル)となっている。
 富国生命保険と日本興亜損害保険も、同容疑者の運営するファンドに間接的に投資していたとされるが、規模は明らかにされていない。(時事通信01/02)

  
 金融商品への信任が次々と失われ、信用収縮に歯止めがかからない状況です。
  
 殆どの投資家は、信用できる投資商品・損しない投資商品を求めて右往左往している状態でしょう。
 それが、急落と急騰を繰り返す荒い値動きを助長し、投資家の不安心理を増幅する悪循環となっています。
  

参考書籍

詐欺とペテンの大百科

著者/訳者:カール シファキス

出版社:青土社( 2001-09 )

定価:¥ 5,040

Amazon価格:¥ 5,040

単行本 ( 576 ページ )

ISBN-10 : 4791759168

ISBN-13 : 9784791759163



アメリカがおかしくなっている―エンロンとワールドコム破綻の衝撃 (NHKスペシャルセレクション)

著者/訳者:大島 春行 矢島 敦視

出版社:日本放送出版協会( 2002-10 )

定価:¥ 1,575

単行本 ( 253 ページ )

ISBN-10 : 4140807210

ISBN-13 : 9784140807217



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