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2009.01.19

ジャスダック上場、エス・イー・エス倒産-凍った設備投資

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 ジャスダック上場のエス・イー・エスが1月16日に民事再生法を申請し、倒産しました。
  
 今年の上場企業の倒産は、3社目となります。
  
 世界的な「設備投資抑制」の影響が、急激に拡大している事が伺えます。

エス・イー・エスが民事再生法・負債総額142億円、半導体不況で受注減
 エス・イー・エスは16日、東京地裁で民事再生手続きの申し立てを行い、受理されたと発表した。負債総額は142億7300万円。半導体不況による受注減少が影響した。
 同社は半導体製造用洗浄装置の製造販売を手掛けている。半導体価格の下落を受けて半導体メーカーが設備投資を手控えた影響で、新規受注が07年10月以降に急減したという。08年4─9月期は、営業赤字が28億5500万円となり、純資産も08年3月期の105億6300万円が71億9400万円に減少して資金繰りがひっ迫。09年2月末までに自力で資金調達するメドがたたないという。
 当面の仕入代金決済と販売は、主要な受注先となっている日本の商社や韓国の協力企業から、支援の申し出を受けているとしている。
 ジャスダック証券取引所は同日、エス・イー・エスが東京地裁に民事再生手続きの開始を申請し受理されたことを受け、同社を2月17日付で上場廃止にすると発表した。1月17日から2月16日までは整理銘柄に指定される。(ロイター01/16)

  

エス・イー・エスの軌跡

 SESは、半導体洗浄装置の大手メーカーです。
 半導体洗浄装置のオートウエットステーション(2007年市場規模約1300億円)では、大日本スクリーン製造・東京エレクトロンに次いで、世界シェア3位です。
半導体洗浄装置の07年世界シェア   
 事業の中心は、国内と韓国市場で、サムスン電子・ハイニックス半導体・東芝等を主要顧客としています。
 最近では、太陽電池製造装置も開発していました。
  

創業

 SESは1978年11月に、東芝出身の柴垣喜造氏によって創業されました。
 設立時の社名は、「三協エンジニアリング株式会社」。
 同社は、1982年に東京都西多摩郡瑞穂町で工場を開設し、自社生産を開始しました。
  

発展

 同社は、1985年に青梅市に工場を建設・移転します。
 その後も九州に工場を建設するなど業容の拡大が続き、1991年5月に、ジャスダックへの上場を果たしました。
エス・イー・エスHP
  
 さらに1998年10月には、同業の株式会社スガイと合併し、社名をエス・イー・エス株式会社へと変更します。
 新会社SESはこの合併により、半導体洗浄装置市場で、世界シェア2位となりました。
  
 当時のトップは、大日本スクリーン製造でシェアは29.5%。SESは23.1%となってトップ逆転も可能な位置へと躍進します。
  
 その後同社は、1999年ごろから海外展開を進め、台湾・韓国に拠点を設立していき、販路を国外へも広げていきました。
  
 時はITバブルで同社には追い風が続きます。

 このころは資金調達も容易でした。
 2000年5月には、国内外で増資を行い約46億円の資金を調達しました。
 この増資等により、自己資本比率は49.5%となり、財務内容も大きく改善しました。
SESの純資産額・自己資本比率の推移   

ITバブル崩壊

 半導体産業は、好況と不況が約4年ごとに繰り返します。
 いわゆる「シリコンサイクル」というものです。
  
 シリコンサイクルの好調期にITバブルが重なり、半導体産業は急拡大しました。
  
 そして、2000年4月にバブルがはじけます。
  
 世界の半導体製造装置は、2000年に487億ドルに達しましたが、翌年には210億ドルまで激減してしまいました。
  
 SESも、2001年9月期以降、3期連続で最終赤字に陥りました。
 同社は、結果としてITバブルの頂点で増資を行い、この資金で未曾有の混乱を乗り切ることが出来ました。
  
 同社の3年間の純損失の累計額は68.2億円です。
 増資前の純資産額は57.4億円ですので、増資しなければ債務超過となるところでした。
  

再成長

 ITバブル崩壊を超え、半導体産業は再び活況となります。
 今度の成長エンジンは、デジタル家電です。
  
 SESの業績も急回復し、過去最高の状態が続きました。
SESの業績推移   
 同社は、シリコンサイクルの谷間の度に巨額赤字を計上しており、非常にハイリスクの経営を強いられてきました。
 経営を安定させるには、好況不況のブレを平準化することが不可欠です。
  
 同社は、製品の多角化に加え、新分野への進出を図ります。
  
 2006年9月、太陽電池製造装置事業を開始しました。
SESインライン式太陽電池セル製造装置   
 太陽電池の製造工程は、シリコンウエハから太陽電池セルを製造するセル製造工程(前工程)と、これらのセルをモジュール化するモジュール製造工程(後工程)に分けられます。
 前工程は、さらに7つの製造工程からなります。
  
  • ①テクスチャリング装置(表面の凸凹処理)
  •   ↓
  • ②拡散炉(加熱拡散処理)
  •   ↓
  • ③ウエット製造装置(酸化膜除去)
  •   ↓
  • ④プラズマCVD装置(反射防止膜形成)
  •   ↓
  • ⑤スクリーン印刷・乾燥機(電極形成)
  •   ↓
  • ⑥焼成炉(焼成)
  •   ↓
  • ⑦セルテスター(検査)
  
 同社は、前工程の7つの製造工程のうち、主要4工程を自社開発を計画していました。
  
 既に、①テクスチャリング装置、③ウエット製造装置の製造販売は行っていました。
 さらに、2008年6月には②拡散炉、9月には④プラズマCVD装置が完成。
 九州工場を、太陽電池製造装置の生産拠点に改装し、本格的展開への準備が整ってきました。

太陽電池事業に特化
 半導体洗浄装置を製造・販売するエス・イー・エスの九州工場(大分市辻原)が、太陽電池製造装置の生産拠点として生まれ変わった。来年6月には、光を電気エネルギーに変換するセルを生産する装置の見本がすべてそろう。2006年以降、九州では太陽電池メーカーが新工場を相次いで完成させており、大分県内の地場企業にも参入チャンスが広がりそうだ。
 九州工場は既に九州ソーラーエナジーシステム工場に名称を変更。セルの表面を加工するテクスチャリングや酸化膜除去といった一部の工程は、既に試作機ができ、受注している。
 今後、セルを一貫生産する装置の開発を進め、10年度には年間200億円の売上高を見込む。13年度には400億円に拡大する見通し。従来の半導体関係の装置は同社のグリーンテクノ工場(岡山県)に集約した。九州工場は太陽電池に特化した事業を展開するため、さらに6―7億円の設備投資を検討している。<-後略->(大分合同新聞08/10/08)

  
 同社は、2010年3月期までに、太陽電池製造装置事業を売上高200億円にして、数年で同社の基幹事業にするという野心的な計画を掲げていました。
  

突然の破綻

 半導体事業の急変は、太陽電池事業が本格的に立ち上がる直前に訪れました。
  
 11月10日に、同社は半期決算を発表しましたが、売上は24.3億円で前年の113.6億円の、8割減となりました。
 当期純損益も半期で32億円の赤字です。
  
 かなりの厳しい業績でしたが、この時点で「倒産間近」と断定するのは困難でしょう。
 9月末時点で純資産は72億円あり、さらに67億円の手元資金が残っていました。
 太陽電池関連売上も順調に伸びており、その面での期待感がありました。
  
 しかし、状況はさらに悪化します。
  
 12月24日、同社は突然リストラ策を発表しました。
  
 東京工場の閉鎖、全社員の4割にあたる正社員200人の削減という、会社存続が疑われるほどの厳しい内容でした。

エス・イー・エス、正社員200人削減へ、全社員の4割、早期退職を募集。
 ジャスダック上場で半導体製造装置メーカーのエス・イー・エス(SES)は24日、全社員の4割に当たる正社員200人を削減するため早期退職者の募集を始めると発表した。募集期間は2009年1月13日から24日まで。工場や事業所の統廃合も進め、30億円の固定費削減を目指す。世界景気の悪化を受けて半導体業界で設備投資を抑制する動きが広がっているため。
 早期退職者の募集は全従業員が対象。01年以来、2回目の人員削減となる。
 併せて取締役や執行役員も減らす。1月中に、現在は8人いる取締役を5人に、5人いる執行役員を3、4人に減らす方向で調整しているという。役員報酬の総額も3割程度削減する。(日経新聞08/12/25)

  
 同社は、早期退職者の募集期間中の1月16日に破たんしてしまいました。
  
 2月末の必要資金が調達できなかったことを直接の理由にしていましたが、突然の倒産に驚いた方も多いでしょう。
 太陽発電関連銘柄として人気もありましたので、被害を受けた個人投資家も相当数いると思われます。
  

倒産原因の推察

売上急減と在庫調整の遅れ

 半導体製造メーカーは、グローバリズムの進展とともに寡占化が進んできました。
  
 その結果、同社の売上構成において特定顧客への集中していきました。
 2008年3月期における売上高の94.0%は、上位10社によるものです。
  
 同社の経営体質は、特定顧客の動向に影響を受け易いものになっていました。
  
 SESは、「大量受注先の納入期日が顧客側の要請により大幅に遅れた」ことを倒産原因の一つと発表しています。
 納入の遅れは、在庫増加・資金受取の遅れとなり、資金繰りに直接影響します。
  
 2007年9月中間期は売上113億円に対し、棚卸資産36億円。
 2008年9月中間期は売上24億円に対し、棚卸資産47億円。
  
 同社は、在庫調整をする時間的余裕さえなく売上が急減したことが伺えます。
  
 消費財ならまだしも、生産設備の場合、一旦過剰在庫になると解消は至難です。そこに資材価格の暴落も影響します。
 加えて半導体産業は、「寡占化」が進んでいますので、さらに厳しくなります。
  
 下半期の純損失が前期並と仮定すれば、通年では65億円の最終赤字となります。
 棚卸資産等の評価減も加算した場合、債務超過の可能性さえあるでしょう。
  

短期借入金への依存

 より直接的な原因は、キャッシュアウトです。
 同社の資金調達は、主に短期借入金で賄ってきました。
SESの借入金残高の推移   
 同社は、社債を発行していましたが、その返済資金は短期借入金で補ってきました。
 短期借入金を借換して、事実上の長期資金として扱ってきたことが伺えます。
  
 今回は、何らかの理由で借換が出来なかったようです。
 それが、「金融情勢の悪化」によるものなのか、それとも経理上の不都合等の別の理由によるものなのかは、現時点ではわかりません。
  

エス・イー・エスの株価

 SES株は、2007年4月以降、新興市場の低迷により弱含んでいました。
  
 しかし、太陽電池関連銘柄が脚光を浴びる中、同社株も大きく上昇し、2008年6月には600円を超える水準まで、回復しました。
  
 しかし、半導体産業の苦境に伴って、株価も下落。
 わずか4ヶ月足らずで、100円台まで暴落してしまいました。
エス・イー・エス6ヶ月チャート   
 同社は、経営不振が伝えられていましたが、倒産間近と意識していた投資家はほとんどいませんでした。
  
 むしろ、100円台になってからの同社株は、底堅い動きでした。
 太陽電池関連業として、同社を評価する投資家からの押し目買いが入っていたと見られます。
  
 倒産当日は、米オバマ政権による環境関連投資拡大の思惑もあり、高値で引けています。
 大半の投資家にとっては、「寝耳に水」の倒産でしょう。
エス・イー・エスの1月16日の株価 エス・イー・エスの1月16日の日中足   
 SESは、1991年5月24日に8100円(現換算値6136円)の初値をつけました。最高値も、同日の8100円です。
 なお、ITバブル期の2000年2月22日には、戻り高値2300円を付けています。
エス・イー・エスの長期チャート  なお、同社株は1991年9月25日に1.2分割、1998年10月14日に1.1分割を行っています。
  

参考書籍

半導体ベンチャー列伝―ニッポン製造業の変革に挑む起業家たち

著者/訳者:泉谷 渉 津村 明宏

出版社:東洋経済新報社( 2007-02 )

定価:¥ 1,785

Amazon価格:¥ 1,785

単行本 ( 302 ページ )

ISBN-10 : 4492761659

ISBN-13 : 9784492761656



徹底解析 半導体製造装置産業

著者/訳者:和田木 哲哉 横山 貴子

出版社:工業調査会( 2008-11 )

定価:¥ 2,310

Amazon価格:¥ 2,310

単行本 ( 201 ページ )

ISBN-10 : 4769312768

ISBN-13 : 9784769312765



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今頃の質問ですがSESは今どうなっているのでしょうか?
復活の望みはあるのでしょうか?

数千株の零細株主です。
答えになってませんが、会社から何のアナウンスもありません。ただ、太陽光関連の設備はたったの6,500万円で売っぱらったとか。
半導体業界は、急速に回復しているので、業績も持ち直していると思うのですが。

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