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2009.05.12

急増する雇用助成金-緊急避難的日本型ワークシェアリング

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 政府は12月以降、雇用のセーフティネットを急ピッチで拡充してきました。

 先日、厚生労働省から雇用施策の利用状況が発表されましたが、3月末現在で対象者は237万人という膨大な数となっています。

雇用調整助成金:申請は4万8226件--3月
 厚生労働省は1日、一時帰休させた労働者の休業手当を企業に助成する雇用調整助成金の3月の申請状況をまとめた。申請は昨年12月以降急増し、3月は4万8226事業所(前月比1万7605件増)で、対象の労働者は237万9069人(同51万3277人増)に上った。
 内訳は大企業が2813事業所、中小企業が4万5413事業所。3月の助成金の支給決定件数は3658事業所で、支給額は58億2010万円。今後支給額は大幅に増加するとみられる。助成金は、解雇や雇い止めをしていないことなどを条件とする雇用維持策として支給されている。(09/05/01毎日新聞)

 詳細は、厚生労働省の報道発表資料をご覧下さい。

 製造業は大幅な生産調整を行っており、生産指数は前年同月比で3割以上減少しています。
 生産の減少分をを雇用へ換算すると、約370万人の労働者が過剰となります。

 「雇用崩壊」が、間一髪で食い止められたと言えます。
雇用調整助成金に係る休日等実施計画届受理状況(2009年3月現在)

 本制度は、大企業も積極的に利用しています。

新日鉄、5月から一時帰休導入 雇用助成金を申請へ
 新日本製鉄が5月から、八幡製鉄所(北九州市)や大分製鉄所(大分市)など全国の主力製鉄所で月に1日程度の一時帰休を実施する。これに伴い、休業や研修で雇用を維持した場合に国が支給する雇用調整助成金を申請する。一時帰休は減産に対応するためで、4月から光鋼管部(山口県光市)など5事業所で実施している。
 八幡での一時帰休は98~00年に実施して以来になる。自動車用の出荷量が前年水準の約3分の1に落ち込んでいる薄板など稼働率の低い工場が中心で、従業員約3千人の半数程度が対象となる。対象者は1日分の賃金が15%カットされる。協力会社の従業員約7千人にも広がりそうだ。
 八幡の08年度の鋼材生産量は354万トンで、3年ぶりに前年を割った。過去10年では01年度に次ぐ低い水準となった。今年1~3月は前年同期比45%減の57万トンで、4~6月も同程度の見通し。保守点検で高炉の送風を止める休風措置を通常の月1日から、4日間に増やしている。
 大分は従業員1600人、協力会社などに約3千人がいる。二つある高炉のうち一つを2月から改修中で、通常ならもう一つをフル操業させるが、現在の稼働率は7割にとどまっている。造船向けは堅調だが、自動車や家電向けが減産している。
 高炉各社では、神戸製鋼所が4月から月1~2日間の一時帰休を実施し、休業日の賃金を40%カット。JFEスチールも4月から、一部で従業員を教育訓練に回し、助成金を申請している。雇用調整助成金は、業績が悪化しても休業や研修などで雇用を維持した場合、その間の手当の一部を国が助成する制度。(09/04/23朝日新聞)


最新の雇用助成金制度

 最新の雇用助成金制度はこちらをご覧下さい。
 問い合わせ先はハローワークです。

 中小企業緊急雇用安定助成金の説明
 雇用調整助成金(大企業向け)の説明
 雇用調整助成金及び中小企業緊急雇用安定助成金の様式

雇用維持政策の変遷

 政府は、昨年12月以降、本格的な雇用対策に乗り出しました。
 予算の確保に伴って、断続的に制度を拡充しています。

08.12.01:雇用対策の開始

 政府は、平成20年12月1日に「中小企業緊急雇用安定助成金制度」を創設しました。

 従来から「雇用調整助成金制度」はありましたが、要件が厳しく、特に業況の急変時には機能しない制度でした。

【従来の雇用調整助成金制度】
1.最近6ヶ月間の月平均生産量が前年同期比10%以上減少
2.最近6ヶ月間の月平均雇用者数が前年同期比で増加していない
3.6ヶ月以上継続して雇用保険に加入している者
4.限度日数は3年間で150日、1年間100日(連続利用は制限)
5.支給額は、大企業で休業手当の50%、中小企業で2/3


これを、中小企業向けにより緩和したのが本制度です。

【中小企業緊急雇用安定助成金制度】
1.最近3ヶ月間の月平均生産量が前年同期比で減少
  (減少率が5%未満の場合は前期が経常赤字)
2.最近3ヶ月間の月平均雇用者数が直前3ヶ月間又は前年同期比で非増加
3.限度は3年間で200日(連続利用は制限)
4.雇用保険に6ヶ月以上継続して加入している者
5.休業日数・対象者が一定規模(所定労働延日数の5%)以上
6.短時間労働は従業員全員が一斉に行った場合のみ認める
7.支給額は、休業手当の80%
8.教育訓練には、1人日額6000円加算


 これにより、旧来の「雇用調整助成金制度」は大企業向けとなりました。

08.12.19改訂

 政府は、平成20年12月19日に「雇用調整助成金制度」と「中小企業緊急雇用安定助成金制度」の要件緩和を行っています

【雇用調整助成金制度の改訂】
1.直近3ヶ月の生産量が直前3ヶ月か前年同期比で5%以上減少
2.雇用量要件の廃止
3.雇用保険の全加入者、非加入者も週20時間以上なら対象
4.教育訓練には、1人日額1200円加算

【中小企業緊急雇用安定助成金制度の改訂】
1.雇用量要件の廃止
2.雇用保険の全加入者、非加入者も週20時間以上なら対象


 さらに、「離職者住居支援給付金」制度(PDF)を創設しています。
 これは、退職者に無償で住居を提供した場合、1名につき月4~6万円(最大6ヶ月)を支給する制度です。
 平成20年12月9日まで遡及して適用となります。
離職者住居支援給付金

09.02.06改訂

 平成21年2月6日以降は、さらに要件が緩和されています。
 この拡充は、1月27日の平成20年度第2次補正予算の成立を受けてのものです。

【雇用調整助成金制度の改訂】
1.助成率を2/3に引き上げ
2.直近3ヶ月の売上高又は生産量が直前3ヶ月か前年同期比で5%以上減少
3.休業等の規模要件の廃止
4.限度は3年間で300日、1年目は200日(連続利用可能)
5.休業日数に応じて支給 (詳細:PDF)

【中小企業緊急雇用安定助成金制度の改訂】
1.直近3ヶ月の売上高又は生産量が直前3ヶ月か前年同期比で5%以上減少
2.休業等の規模要件の廃止
3.限度は3年間で300日、1年目は200日(連続利用可能)
4.従業員毎の短時間休業も支給 (詳細:PDF)


09.03.13改訂

 平成21年3月13日付で、実務面で改訂が行われ、さらに利用しやすくなりました。

1.「時間外労働等相殺」の廃止
 従前は、休業する一方で残業を行っていた場合、休業時間と残業時間は相殺することになっていましたが、今後は相殺しないことに変更されました。

2.「申請書類の簡素化」
 申請書類を減らし、一部自社様式での書面を認めることで、申請企業の事務作業が簡素化されました。

3.「教育訓練の判断基準」の緩和・公開
 「教育訓練の判断基準」が公開(PDF)され、講師によって行われる教育訓練なら大部分が認められるようになりました。

教育訓練の判断基準

09.03.31改訂

 政府は、「日本型ワークシェアリング」の促進のため、解雇を行わない事業者に対して、支給率を上乗せしました。

【支給率の上乗せ】
1.雇用調整助成金の場合、3/4(通常2/3)
2.中小企業緊急雇用安定助成金の場合、9/10(通常4/5)
(詳細:PDF)


 さらに、「残業削減雇用維持奨励金」制度(PDF)を創設しています。
 これは、解雇をせずに残業を場合、1名につき年20~45万円(最大100名)を支給する制度です。
残業削減雇用維持奨励金のイメージ

失業手当との対比

失業手当

1.給付額
  「在職中の給料(直近6カ月間)の平均額 × 50~80%
 上限は、年齢にもよりますが、日額7,730円・月約23万円です。
 なお給料とは総支給額のことで、残業手当や通勤手当を含みます。
 失業手当は、非課税所得となります。

2.給付期間
 給付期間は、被保険者期間に応じて90日~330日です。
被保険者期間 1年未満 1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
30歳未満 90日 90日 120日 180日
30歳以上
35歳未満
90日 90日 180日 210日 240日
35歳以上
45歳未満
90日 90日 180日 240日 270日
45歳以上
60歳未満
90日 180日 240日 270日 330日
60歳以上
65歳未満
90日 150日 180日 210日 240日

雇用調整助成金

1.給付額
 「休業手当 × 67%~90%」となります。
 休業手当は、平均賃金の60%となります。
 平均賃金とは過去3ヶ月総賃金(残業代等含む)の平均給料です。

使用者の責に帰すべき事由により休業する場合は、休業期間中は平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければならない。(労働基準法第26条)

 上限は、失業手当の上限(日額7,730円)と同じです。
 雇用調整助成金は、企業に支払われますが課税所得です。
 失業手当は企業から個人へ支払われますが、これは通常の給料と扱いは一緒です。

2.給付期間
 企業が申告した休業期間となります。
 なお上限は、3年間で300日、1年間200日以内となります。

雇用助成金急増の背景

政府

 政府から見れば、支給水準は失業手当も助成金も大きな違いはありません。
 課税所得となる分だけ、雇用調整助成金の方が有利でしょう。

 たとえ外需要因にせよ、失業者数や失業率が上昇すれば、社会的混乱も生じ、政府への風当たりも強くなります。
 特に選挙直前のこの時期、失業が増えれば、現政権の致命傷となる恐れがあり、政府が力を入れるのも当然でしょう。

企業

 生産調整が余儀なくされてる企業にとって、労働コストの削減は焦眉の急です。

 生産調整には「解雇」という手段もあります。
 元々、派遣労働の緩和は、生産量に応じて弾力的に雇用者を増減させるための制度だったのですが、当初の目論見どおりには機能しませんでした。
 昨年秋の「派遣切り」騒動では、強い社会的批判を浴び、企業イメージにダメージを受けた企業が続出しました。

 こうした企業にとって、「雇用助成金」は解雇に変わる雇用コスト調整手段として、うってつけの制度となりました。

労働者

 労働者にとっては、「失業」が「社内失業」に置き換わっただけですが、それでも完全失業より遙かに負担が少ないでしょう。
 失業手当は受給期間も短く、次の職探しも困難ですので、失業はできるだけ回避したいのは当然と言えます。

 休業となれば収入は減りますが、大手企業でも休業期間内の「アルバイト」を認めるところも増えており、ある程度自力救済できる場合もあります。

日産、副業を容認 全社員3万人が対象
 日産自動車は6日、減産に伴う休業日に限って副業を容認することを明らかにした。3月の休業日から導入する。日産は休業日の賃金を2割カットしており、目減りしている賃金を社員が補えるようにする狙い。
 副業容認は電機業界などで広がっている。自動車業界では三菱自動車の水島製作所(岡山県倉敷市)が工場の独自の判断で一時、認めていたのみで、会社として判断するのは日産が初めて。
 対象となるのは事務職など間接部門を含む全社員約3万人。追浜工場(神奈川県横須賀市)やエンジンを生産する2工場では3月に休業日が設定されていないことから3月の申請を受け付けない。
 日産は副業によって社員の健康状態や業務に支障が出ないよう、労働時間を1日8時間以内、週40時間以内と定めるなど独自のルールに沿って運用する方針。社員は会社に申請したうえで副業にあたる。(09/03/06中日新聞)


 雇用助成金がこれほど急激に増えているのは、政府・企業・労働者の利害がうまく合致したためでしょう。
 さらに日本の雇用制度も、この大不況を機に、大きく変化する可能性があります。

参考書籍

小さな会社の トクする 人の雇い方・給料の払い方

著者/訳者:井寄 奈美

出版社:日本実業出版社( 2009-04-18 )

定価:¥ 1,470

Amazon価格:¥ 1,470

単行本(ソフトカバー) ( 232 ページ )

ISBN-10 : 4534045441

ISBN-13 : 9784534045447



日本的ワークシェアリングの“ススメ”―大不況に勝ち残りたい経営者へ

著者/訳者:長倉 貞雄

出版社:アスク( 2009-04 )

定価:¥ 1,500

Amazon価格:¥ 1,500

単行本 ( 141 ページ )

ISBN-10 : 4901681575

ISBN-13 : 9784901681575



賃金とは何か―戦後日本の人事・賃金制度史 (オーラルヒストリー・シリーズ)

著者/訳者:楠田 丘 石田 光男

出版社:中央経済社( 2004-12 )

定価:¥ 3,780

単行本 ( 298 ページ )

ISBN-10 : 4502376906

ISBN-13 : 9784502376900




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