大腸がんの新薬状況-2013年4月現在



 現時点での、大腸がんを対象にした最近承認された新薬、登録されつつある新薬をまとめてみました。

 いずれも、現行の標準化学療法が全て無効となった進行/再発大腸がんという極めて厳しい状況下(サードライン・フォースライン)での治療薬です。

スチバーガ(一般名レゴラフェニブ)
 レゴラフェニブは、分子標的薬(マルチキナーゼ阻害薬)の一種で、独バイエル社が開発しました。
 基本的には標準治療終了後で今まで治療方法がなかった患者に使われる薬剤です。
 腫瘍縮効果はありませんが(2%の患者しか縮小しなかった)、44%の患者で腫瘍増殖や症状の悪化を抑え、結果として生存期間の延長効果があります。
 無増悪生存期間のグラフを見ると、最初の2か月の乗り切った人には、さらに数か月(2か月以上)の生存延長が見られます。
レゴラフェニブ無増悪生存期間  KRAS遺伝子変異の有無の影響もないので、適応範囲は広そうです。
 なお、早期の副作用の発現と病勢制御率の間に相関があるらしく、3週間以内に手足皮膚反応・疲労・下痢の症状があれば、6か月の生存延長の可能性が高まります(PDF)。
 治療の選択肢が多くなるのはよいのですが、副作用がかなり厳しいのが気がかりです。

国内承認申請2012年7月 → 承認2013年3月25日
全生存期間(OS)中央値 プラセボ5.0か月 → 6.4か月
無増悪生存期間(PFS)中央値 プラセボ1.7か月 → 2.0か月
奏効率 プラセボ0.4% → 1.0%
病勢制御率 プラセボ15.3% → 44.8%
投薬サイクル(4週間)は、1日1回3週間経口投与した後、1週間休薬。
副作用は、肝障害(死亡事例有)に加え、衰弱/疲労、食欲不振、手足症候群、下痢、口内炎、体重減少、感染症、高血圧、発声困難。


ザルトラップ(一般名アフリベルセプト)
 アフリベルセプトは、分子標的薬(血管内皮増殖因子VEGF阻害剤)の一種で、仏サノフィが開発しました。
 オキサリプラチン抵抗性を示した場合に、FOLFIRIと併用投与することで薬効が得られる薬剤です。
 この薬は価格が特に高く(月11,000ドル=約100万円)、あまりの高さに米病院の抵抗にあって、発売2か月で薬価を半分に値下げする事態になりました。
 なお、薬効はFOLFIRI単独より高いですが、こちらも副作用が厳しそうです。

国内承認申請は不明(米国では2012年8月3日承認)。
全生存期間(OS)中央値 FOLFIRI単独12.06か月 → 13.50か月
無増悪生存期間(PFS)中央値 FOLFIRI単独4.67か月 → 6.90か月
奏効率 FOLFIRI単独11.1% → 19.8%
副作用は、消化管出血/消化管穿孔(重篤)、白血球数減少、下痢、口腔潰瘍、疲労、高血圧、尿タンパク増加、体重減少、食欲減退、腹痛、頭痛。

TAS-102
 TAS-102は、代謝拮抗剤の一種で、ゼローダや5-FUと同じ系統の薬剤です。
 日本の大鵬薬品工業が開発しました。
 こちらもレゴラフェニブと同様に腫瘍縮小効果はありませんが病勢制御率が高く、結果として生存期間の延長効果があります。
TAS-102  直接的な副作用で重篤なものは少ないのですが、好中球や白血球減少で免疫力が低下するため、感染症の心配があります。

国内承認申請2013年2月 → 承認審査中
全生存期間(OS)中央値 プラセボ6.6か月 → 9.0か月
無増悪生存期間(PFS)中央値 プラセボ1.0か月 → 1.9か月
奏効率 プラセボ? → 0.9%
病勢制御率 プラセボ10.5% → 43.8%
投薬サイクル(4週間)は、1日2回を5日経口投与後2日休薬×2回後、2週間休薬。
副作用は、グレード3以上で、好中球減少症50%、白血球減少症28%、貧血17%、下痢・倦怠感・悪心等は10%以下となっています。


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