大腸がん治療の先端技術動向-平成25年8月現在



 がんワクチンや免疫細胞療法などは、マスコミでは「夢の治療法」として好意的に報道されています。

私も手術直後の病床で、がんペプチドワクチンを取り上げたNHK特集を見ていました。
NHK特集予告
 ただし現状では、まだまだ研究・臨床段階の技術であり、エビデンスも不十分ですので、どの程度の効果があるのか、既存の抗がん剤との優劣などは不透明です。

 そこで、先端的な治療法などで大腸がん関連のものを、現段階でまとめてみました。


がんペプチドワクチン-久留米大学
 7月11日に、がんペプチドワクチン療法専門の外来と研究施設として、「久留米大学がんワクチンセンター」が開設しました。
 がんワクチンでの治療と研究を行う合同施設としては世界初の施設となります。
がん治療:ワクチンセンター開所 福岡・久留米大
 新たながん治療法として注目されるがんペプチドワクチン療法専門の外来と研究施設「久留米大学がんワクチンセンター」が11日、福岡県久留米市国分町の同大医療センター内に開所した。ペプチドワクチンのがんセンターとしては世界初。
 ペプチドワクチン療法は、がん細胞表面のペプチド(たんぱく質の断片)を利用したワクチン投与により、人体の免疫機能を維持する「キラーT細胞」が刺激を受けて増殖、ペプチドを目標に攻撃し、がん細胞を破壊する。がんの進行を遅らせたり、延命効果が期待でき、副作用が少ないという。同大は個々の患者に合わせてワクチンを組み合わせる「テーラーメード型」治療を進めてきた。
 診察室5室、研究室17室を備え、伊東恭悟センター長以下、39人の医師や看護師、研究スタッフらが所属。従来は1日20人程度だった患者が40〜50人程度対応可能になり、治験を進めている前立腺がんと、脳腫瘍の中でも重度の膠芽(こうが)腫に対するワクチン実用化への弾みになると期待される。
 伊東センター長は「健康保険が適用されるよう、3〜5年後には医薬品申請をし、患者の元に届けたい」と抱負を語った。
 診療対象は、婦人科がんなどを除くがん一般。診療は月〜金で完全予約制。(2013/07/12毎日新聞)
 久留米大学のがんペプチドワクチンは、「テーラーメイド型」と言い、伊東恭悟教授が開発した技術です。
 各患者の遺伝子・免疫に合致したペプチドを選択して、効果の高いワクチンを投与する手法です。

 先行しているのは前立腺がんで、今月からフェーズⅢ試験が行われています。

 大腸がんは2008年~2011年にフェーズⅡが行われ、現在経過観察中のようです。
 なお、現時点(2013年7月)でも、大腸がんも臨床試験の対象になっております。
 受診するには、申込前の条件(血液等)に加え、申込後に行う血液検査(免疫等)に合致する必要があります。
 2010年ごろの情報だと、申込者の約半数程が適応者のようです。
 まだ治験段階ですので、費用は自由診療で1クール(6~8回投与)でおよそ60~80万円です。
 なお、高度医療となるのは前立腺がんのみですので、大腸がんは対象外です。

 肝心の効果については、腫瘍の縮小効果が認められた患者は1割程に過ぎません。  患者向けの資料(PDF)では、「これまでの研究結果からは、本療法による完全治癒や、抗がん剤や放射線治療に取って代わるほどの腫瘍縮小効果は期待できません。」とはっきり記載しております。

 但し、66%の患者に免疫力の増強が見られ、その患者には生命期間の延長が認められるそうです。
 個人的な試算ですが、大腸がん患者全体に対する奏効率は、申込前適応率(80%)×申込後適応率(50%)×治験者奏功率(66%)=26%となります。
 なお、重篤な副作用の発生確率は4%となります。

 なお、がんペプチドワクチンの開発には国も支援しています。
 しかし、名称だけは今風にコロコロ変えますが、実質的な額はわずかです。
 平成20年に「先端医療開発特区(スーパー特区)」に選定、平成21年に「知的クラスター創成事業(グローバル拠点育成型)」に選定、平成22年度からは「イノベーションシステム整備事業」に再編されています。
 しかし、実質は5年間で2.5億円の支援を行うだけです。

 一方で福岡県は、県としてかなり熱心に取り組んでおります。
 福岡県庁は、がんペプチドワクチン関連の情報を盛んに広報しており、7月12日も福岡がんワクチン国際シンポジウム行われています。
福岡がんワクチン国際シンポジウム
福岡県は、県南部の久留米地域において、バイオ産業の振興に取り組んでおり、医療分野の中核として「がんペプチドワクチン」の開発を進めています。がんペプチドワクチンは、外科手術、抗がん剤、放射線に次ぐ第4の治療法であり、患者自身の免疫力を活用し、がん細胞のみを攻撃する副作用の少ない治療法です。
 これまで、久留米大学を中心として技術開発を進め、県は、この取り組みを強力に支援してきました。
 前立腺がんについては、実用化に向けた最終段階の第3相臨床試験が8月にも開始されることになり、早期の薬事承認が期待されています。
 県では、この成果を国内外に広くアピールするため、7月12日、福岡市内で国際シンポジウムを開催しました。
 小川知事は「がんワクチンや免疫療法における最先端の研究動向や将来像について、世界の研究者や企業の方々に討議していただき、技術開発や実用化が加速していくことを願っています」/と述べました。(2013/07/12福岡県庁広報)

 個人的には、化学療法に取って代わる治療法ではなく、化学療法と併用することで治療の上乗せ効果を狙う場合や、標準治療が適応外になるかサード・ライン以降で副作用が少ない治療を望む場合などに適していると思います。
 大腸がんに対しては、あくまで補完治療という位置づけだと思います。

 <参照>

がんペプチドワクチン-川崎医科大学(岡山県)・近畿大学
  岡山県の川崎医科大学でもがんペプチドワクチンの臨床研究を行なっています。
 がんワクチンの費用は無料になります(検査費等は有料)。
 但し、対象者は標準治療が無効の方となっていますので、限定的です。

 近畿大学でも臨床研究を行なっています。
 北海道大学遺伝子病制御研究所と共同で第Ⅱ相臨床研究を行なっています。
 少し前の記事ですが、2010年8月17日発表のものの継続研究となります。
新型がんワクチンが効果 臨床試験で北大グループ
 がんワクチンによる免疫療法の研究を進めている北海道大遺伝子病制御研究所のグループは17日、新型のワクチンを使った臨床試験で一定の効果が得られたと発表した。
 がんのワクチン療法は、がん細胞表面の小さな突起(ペプチド)を目印に、免疫細胞ががん細胞を攻撃するのに着目。人工的に作ったペプチドを注射することで、体内に免疫細胞が大量にでき、がん細胞を攻撃する。
 これまでのワクチンはがん細胞を直接攻撃する「キラーT細胞」を増殖させる効果があったが、研究グループは免疫調節の司令塔役を果たす「ヘルパーT細胞」も同時に活性化するペプチドを人工的に合成。ワクチンとして活用した。
 昨年から北大病院などで始めた臨床試験で、6例のうち4例でがんに対する免疫力が向上。抗がん剤や放射線による治療が効かない進行乳がんに投与した近畿大病院(大阪府)の例では、CTスキャン上でがんの転移した部分が完全に消えたことが確認された。(2010/08/17共同通信)
 費用等は不明ですが、こちらの対象者も標準治療に抵抗性または不耐性の方となっています。

 <参照>

免疫細胞療法
 免疫細胞療法とは、患者自身の免疫細胞を増殖させ、体内に戻す治療法です。
 一口に免疫細胞といっても、樹状細胞、NK細胞、アルファ・ベータT細胞と各種存在します。
 免疫細胞療法は、従来から一部医療機関で実施していましたが、自由診療のため高額な治療費が必要になります。
 高額な治療費の一方で効果に客観的な証明がないので、一種の「賭」のようなものです。

 今年になり免疫細胞治療の有効性を評価する試験が始まりました。

 今回の臨床試験は、ステージ4の患者に対して、一次治療と免疫細胞療法を併用した試験となります。
福岡大学と大腸がんStage Ⅳに対する免疫細胞治療と全身化学療法の併用療法に関する臨床試験を開始(PDF)
免疫細胞治療の専門医療機関である医療法人社団 滉志会 瀬田クリニックグループは、学校法人福岡大学と共同で、Stage Ⅳの大腸がんを対象とした化学療法(XELOX+ベバシズマブ療法)と免疫細胞治療(アルファ・ベータT細胞療法)の併用に関する臨床試験を開始致しました。
本共同臨床試験では、福岡大学医学部外科学講座 消化器外科学 吉田 陽一郎 医師を研究責任医師として、先進医療の承認取得や地域中核医療機関等との多施設における共同臨床研究への展開も視野に入れ、StageⅣ大腸がんの初回治療で実施される化学療法(XELOX+ベバシズマブ療法)に免疫細胞治療(アルファ・ベータ T 細胞療法)を併用した場合の安全性と有効性を評価します。福岡大学病院(福岡県福岡市)が、化学療法の実施等を、瀬田クリニック福岡(福岡県福岡市)が免疫細胞治療の実施を担当し、得られた治療情報を臨床データとしてまとめ、福岡大学と瀬田クリニックグループ臨床研究センターとが共同で解析、評価を行います。(2013/06/10医療法人社団滉志会 瀬田クリニックグループ発表)

 この治験は対象者6名ですので、かなり小規模なものです。
 個人的には、補完治療になりうるかどうか判断する前段階のものだと思います。

 なお、瀬田クリニックグループは、免疫細胞療法に力を入れている医療機関です。
 治療は高額で、効果は今のところ未知数です。

 <参照>
 <参考書>
 2011年4月発刊なので若干古い本ですが、免疫細胞治療に関する参考書です。
 瀬田クリニックについての記載もあります。


ゲノム創薬-オンコセラピー
 ヒトゲノム研究や分子生物学の進歩によって、分子標的薬の開発が急速に進んでいます。
 その研究の第一人者が、医療イノベーション推進室長を辞任し、シカゴ大学へ移籍した中村祐輔教授です。

 その中村教授が創業メンバーであるオンコセラピー・サイエンス社は、がん幹細胞に対する分子標的薬(OTS167)を開発し、2013年8月から米シカゴ大学で治験を開始します。
がんの親玉を狙い撃ち…日本発新薬、米で治験
 米シカゴ大学の中村祐輔教授は2日、がんの元となる「がん幹細胞」を狙った新しいタイプの抗がん剤の臨床試験(治験)を来月から米国で始めることを明らかにした。
 この薬剤は日本で研究・開発されたもので、米国での4~5年後の実用化を目指している。
 中村教授は東京大学在任中に、がん細胞だけで働く遺伝子を網羅的に検索。乳腺や肺、前立腺、膵臓すいぞうなど幅広いがん細胞で活発に働き、がん幹細胞の維持に重要な働きをしているたんぱく質を発見した。創薬ベンチャー企業「オンコセラピー・サイエンス」(本社・川崎市)が、このたんぱくの働きを抑える薬剤を開発。人のがん細胞を移植したマウスにこの薬剤を与えると、がん幹細胞の増殖が抑えられ、がんが縮小した。
 治験は、オンコ社が実施。シカゴ大で、実際にがん患者に薬剤を投与して、安全性などを確認する。
 中村教授は「研究を始めて10年で、ようやくゴールが見えてきた。日本は、新しいタイプの抗がん剤で出遅れ、医薬品の大幅な輸入超過に陥っている。審査が早い米国でまず日本発の薬を実用化したい」と話す。(2013/7/3読売新聞)
 まだ、フェーズⅠが開始となる段階ですので、適合する癌腫や効果は不透明です。

 なお、この薬を開発したオンコセラピー・サイエンスはがん治療ワクチンを開発する創薬ベンチャーです。
 実質的には、中村教授らの開発成果をビジネス化するための企業と言えます。
 2001年に設立し、2003年にはマザーズ市場へ上場しています。
 創薬ベンチャーには、経営が成り立っていない企業も多く玉石混交ですが、こちらは収益性は不安定ですが、自己資本比率や現預金残高が高く財務は安定しています。

 なお、同社関連としては、大腸がん治療用のペプチドワクチン(OCV‐103/104)が既にフェーズⅠの治験がはじまっています。 大腸がん治療用ペプチドカクテルワクチン第Ⅰ相臨床試験開始のお知らせ(PDF)
当社が大塚製薬株式会社(以下、「大塚製薬」)にライセンスアウトしました大腸がん治療用ペプチドカクテルワクチンにつきまして、大塚製薬が第Ⅰ相臨床試験を開始いたしますので、お知らせいたします。
この臨床試験は、標準療法に対して不応あるいは不耐の大腸がん患者に対し、大腸がん治療用ペプチドカクテルワクチン製剤を投与した際の安全性および免疫反応を検討し、次相臨床試験につなげるものです。
本ペプチドカクテルワクチンは、ゲノム包括的解析などにより見出された、正常組織にはほとんど発現せず、大腸がんに高頻度に高発現する複数個のオンコアンチゲン由来のエピトープペプチドを有効成分とした製剤であり、大腸がんに特異的な細胞傷害性 T 細胞を誘導することにより、抗腫瘍効果を発揮することが期待されます。(2013/01/07オンコセラピー・サイエンス社IR)

大塚製薬とOTSが、大腸がん等のペプチドワクチンの研究・開発に関する提携を結んだのは2003年10月10日ですから、9年越でようやく臨床試験までこぎつけたことになります。

 治験が始まって上市されるまで4~5年かかりますので、私も含めて現在のがん患者が使える可能性はかなり厳しいでしょう。
 ただ、長く生きれば生きるほど治療の選択肢が広がり、効果も高くなりますので、「がんとの戦い」の励みになります。

 <参照>
 <参考書>
 がんペプチドワクチンの現状はこちらの本がわかりやすいと感じました。
 大腸がんに対する記述もあり参考になりました。

副作用を減らす技術
 まだ初期の研究段階ですが、こちらの技術は面白い発想です。

 がん細胞にのみ侵入するタンパク質の「ナノロボット」を作って、抗がん剤を運ばせようという試みです。
 東北大、ウイルス由来のペプチド利用し細胞内移動「ナノロボット」作製
 東北大学病院の鈴木康弘講師らの研究グループは、発光性の半導体ナノ粒子の表面にたんぱく質の小片であるペプチドを8個結合し、細胞膜上を移動して細胞内に侵入できる「ナノロボット」を作製した。がん細胞など目的の細胞に薬剤を能動的に送り込める。投与する薬を減らし、副作用を抑えて治療できる可能性がある。従来は細胞内に導入するために薬の濃度を高くする必要があり、副作用が起こるといった問題があった。
 直径20ナノメートルの蛍光ナノ粒子の表面に、細胞膜を通過して細胞内に侵入できる性質を持つ、エイズウイルス(HIV)由来のペプチドを8個結合した。作製した粒子はモーターたんぱく質を利用して、細胞表面を移動する。その後、粒子は細胞の物質取り込み作用を利用して細胞内に入る。ペプチドが刺激となって、移動したり取り込まれたりする作用を引き起こす。(2013/06/17日刊工業新聞)
 「ナノロボット」に抗がん剤を運ばせることで、現在よりはるかに少ない量で、同等の効果を得られることになります。
 正常細胞にいく抗がん剤の量が減りますので、副作用のリスクが大幅に縮減する可能性があります。

 同様の研究は東京大学でも行われています。こちらは「高分子カプセル」を使うものです。
東大、高分子カプセル入り抗がん剤で治療効果が高まることを実証
 東京大学大学院工学系研究科の片岡一則教授らのグループは、抗がん剤を高分子材料のカプセルで包み込むことで、がんの治療効果を飛躍的に高められることを、すい臓がんを自然発症したモデルマウスでの実験で明らかにした。静脈に投与した抗がん剤が血中で分散せず、目的のがん組織にのみ集積することを確認できた。この薬物送達システム(DDS)の有効性を実際のがん患者と近い条件のマウスで実証できたことで、実用化に弾みがつくと期待される。
 グループは「高分子ミセル粒子」に抗がん剤を内包する技術の実用化を目指している。今回は遺伝子改変によりすい臓がんを自然に発症するマウスを作製した。
 同マウスに、白金を主成分にした既存の抗がん剤をそのまま静脈投与する群と、高分子ミセル粒子で包んで静脈投与する群に10匹ずつ分けて50日間観察。その結果、高分子ミセル粒子を使った群はすべてのマウスでがん組織が縮小し、生存率は100%だった。(2013/06/25日刊工業新聞)


大腸がん健診精度の向上
 三重大学が血液検査で大腸がんを判定する手法を確立したという報道がありました。

 しかも92%という高い確率で判定でき、がん化前のポリープの段階でわかるという優れものです。
 血液検査で大腸がん発見 三重大教授ら「確率92%」
 三重大学の楠正人教授らの研究グループは4日までに、血液検査で大腸がんかどうかを92%の高確率で判定する手法を確立したと発表した。がん細胞が分泌する微細なマイクロRNA(リボ核酸)に着目した。がんの前段階であるポリープも高い確率で判定でき、発病前に治療することも可能になるという。
 米医療機関との共同研究。論文は6月に発行された米国立がん研究所の機関誌に掲載された。
 楠教授らは、日本人282人の血清を分析し、大腸がん患者は、大腸がんで多く発生する「miR―21」と呼ばれるマイクロRNAが健常者の約5倍に増えることを発見した。ポリープ患者でも約2倍になり、82%の確率で判定できる。0.5ミリリットルの血液があれば約3時間で判定可能という。
 大腸がんでは、便に混じった血液を調べる「便潜血検査」や腫瘍マーカーによる検査が一般的だが、発見できる確率や精度が低かった。楠教授は新たな検査方法について「臨床試験が始まれば2年程度で実用化のメドが立つ」としている。(2013/07/05日本経済新聞)

 大腸がんの健診は、便潜血検査が一般的ですが、必ずしも初期で発見できるものでなく、陽性反応が出てもがんである確率は数%で、検査精度は高くありません。
 腫瘍マーカーも、正常値の範囲であっても、進行がんを患っているケースも多く、初期発見にはなかなかつながらないのが現状です。
 内視鏡検査は、精度が高いのですが、準備に丸2日かかり事前予約も必要なので、勤労世代にはなかなか敷居が高いものです。

 私の場合も、職場健診の便潜血検査で陽性になり、その後の内視鏡検査でがんが発覚したのですが、既にステージ4の進行がんでした。
 健診で肺のX線撮影も行いましたが、肺転移も見つかりません。
 術前検査で腫瘍マーカーも調べましたが、正常値の範囲でした。

 血液検査でがんが高確率でわかれば、検診者の負担も少なくなり、一気に普及するでしょう。
 この技術が確立できれば、大腸がんの患者数は大幅に減少すると期待されます。


 こちらは、がん患者の転移リスクを診断する方法です。
阪大、リンパ節の転移量で大腸がんの再発リスクを判断
 大阪大学大学院医学系研究科の森正樹教授と山本浩文准教授らは10日、大腸がんのリンパ節に転移した微小ながん細胞を調べることで、大腸がんの再発リスクを判断できることが分かったと発表した。がんの進行度が進む前に予防策を講じる手段になると期待される。
 リンパ節は病原菌などの侵入を防ぐ免疫器官。従来はリンパ節への転移診断は顕微鏡を使った検査をしている。ただリンパ節中に転移した微小がん細胞は見つけにくく、転移巣が見つからなかった場合でも、より小さい転移芽が生じている可能性がある。
 研究グループは「ステージ2」と呼ばれる大腸がんの病期段階にある約300人の患者のリンパ節を「RT―PCR法」という分子検査で調べ、微小がんの転移・再発の有無を5年間にわたり、観察した。その結果、リンパ節中にあるがん細胞量が少ないと5年以内の再発率は6・6%だったが、多いと再発率は27・4%に達したという。(2013/07/11日刊工業新聞)
 こちらの対象者は、ステージ2から3の方になると思います。
 術後化学療法を受けるかどうかの判断材料になる技術です。


日本のがん治療の先端技術動向雑感
 個人的な感想ですが、前述のがんワクチン療法等は、治療効果の点では3大療法(手術・放射線・抗がん剤)には遠く及ばないのが現状だと思います。
 マスコミは、個別の良い事例だけを取り上げて「効いた効いた」と喧伝しますが、それが本当に治療効果によるものなのかの検証もない段階では、3大療法から乗り換えるのは無謀でしょう。
 利用するとすれば3大療法の補完としてでしょう。

 否定的なニュアンスが強くなりましたが、あくまで現代段階で自分の治療に取り入れるかどうかであって、先端技術の将来には大いに期待していています。
 実際、ここ10年来、がん治療の技術は加速度的に進歩しています。

 私個人の場合に当てはめると、以前ならより副作用が厳しい治療をして、入院期間が長くて仕事もできず、統計的にはそろそろ死期を考える時期だったでしょう。
 それが、ゼロックス+アバスチン療法により、仕事も続けられ、まだまだがんと互角に戦えています。

 がんの治療技術が向上している原因は、がん医療が世界レベルで大きな市場になり、優秀な人材や投資資金が集まっていることが一因だと思います。

 もちろん、研究者や臨床医師の「1人でも多くの患者を救いたい」という使命感が根底にはあるのでしょうが、徒手空拳で立ち向かうより、資金面・設備面・人材面のバックアップが潤沢であれば、実現可能性はさらに高まります。

 日本では、がん治療に関する「種子」は生まれています。
 ここ数か月間だけでも、がん治療の研究開発に関する大量の報道がなされています。
 しかし、その成長を促進することが難しいようで、結果的にはがん治療薬の貿易赤字は年々増加しているのが現状です。

 新しい治療をより早く実用化すれば、患者のためにもなるし、日本経済のためにもなるのでスピード感を持って改革することを切望します。



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