抗がん剤治療の動向-平成25年6月現在
スチバーガの上市
平成25年5月24日付けで、スチバーガ(一般名:レゴラフェニブ水和物)が薬価基準収載となり、同日付けで発売となりました。手術や他の薬剤が効かない場合、副作用に十分な対応可能な医療施設に限定するなど制約条件はありますが、大腸がんでも保険適用となります。
・効果
効果については、以前の記事を参照下さい。大腸がんの新薬状況-2013年4月現在
奏効率について補完しておきます。
がん細胞の縮小効果はほとんどありませんが、拡大を抑制することで延命につながっています。
・副作用
レゴラフェニブ使用者のうち副作用は生じた人は、93.0%だそうです。主な副作用は、手足症候群44.6%、下痢33.8%、食欲減退30.4%、疲労29.0%、発声障害28.4%、高血圧27.8%、無力症19.8%、発疹19.6%、口内炎16.4%、粘膜炎症15.2%、悪心14.4%、体重減少13.8%、発熱10.4%です。
なお、このうちグレード3以上の副作用は55.0%に認められ、主な副作用は手足症候群16.6%、下痢7.2%、高血圧7.2%、 疲労5.6%などです。
やはり副作用は厳しそうです。
使用状況を考えると、他の抗がん剤で弱った体にさらに新たな薬を投与するのでしょうから。
過半の患者でグレード3以上の副作用が発生することもあり、投与可能な医療機関も限定されます。
それでも、今まで延命の手段すらなかった患者に使える薬が増えただけでも、歓迎すべきなのでしょう。
がん完治の特効薬がない現状では致し方ないところです。
・患者向けパンフレット
参考までにパンフレットです。抗がん剤の混合診療が解禁の見込み
この秋から抗がん剤治療における「混合診療」が解禁となる見通しです。政府が14日に閣議決定する規制改革の実施計画に、保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」の対象範囲拡大について、「秋をめどにまず抗がん剤から開始」と明記することが分かった。政府関係者が12日、明らかにした。一部に保険適用を認めて負担を軽減することで、先進的な治療を受けやすくする狙いだ。
実施計画では、混合診療の対象となるかどうかの判定を迅速に下すため、外部機関による専門評価体制を新たに創設することも盛り込む。1件当たり6~7カ月かかる審査期間の短縮を図り、混合診療の普及を促す。(時事通信2013/06/12)
進行がん患者にとっては、治療の選択肢が増えるのでありがたい話です。
しかも、発表から3か月程度で施行となるのは日本にしては迅速です。
なお、対象になるかは約半年の審査が必要とのことなので、実施段階で骨抜きならないか心配はあります。
「混合診療」の解禁については、国民皆保険制度が崩壊して医療の所得格差が生じるとか、安全性が低下するなど、否定的な意見も多いです。
がん患者、特にステージの高い患者は、わずかでも効果がありそうな治療・自分が納得する治療を受けたいのであって、保険診療・自由診療の区別は意味がありません。
現状は、保険外の診療を受けるには、今の保険診療を受けている医療機関とは別の医師を探す外なく、不便を強いられています。
医療機関にしても、患者のニーズがあっても、あえて保険外診療を行うメリットは生じません。
結果、国の認めた治療だけを行うことになり、患者は保険外診療を受けられないという機会損失を被ります。
以前は、日本の医療水準が高かったため、これでも良かったのでしょうが、最近は他国がビジネスとして医療を捉え、富裕層を対象とした先端的な治療を行う病院が増えています。
さらには、研究者の国外移転は進行してますし、抗がん剤は輸入頼りになってしまいました。
安倍政権は、医療分野の改革を前面に打ち出しており、個人的にはありがたいことです。
医療分野の規制緩和・規制撤廃も時間の問題でしょうが、できればスピード感をもって進めて頂き、その恩恵にあやかりたいものです。
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